作品集
改札を抜け階段を下りると、丁度電車が到着し、すぐに乗り込む。まだまだ空は水色で、車内に人はまばらだった。適当に座り、鞄から読みかけの本を取り出すと、現実から逃げるように活字にのめり込む。
何もない現実。平々凡々で無色透明、無味乾燥で普遍的な僕の果てしない人生。真面目に生きて、何の変哲もない死を遂げて灰になっていく。
ひたすら面白みのない、僕の人生。
しかし僕は憂いている訳ではない。悲観や自惚れは、哀れな人間のやることだと本に書いてあったからだ。僕はその思想に賛成している。だからその納得した思想に基づいて生きている。
悲観や自惚れをするのは意味のあることだと思い、実行する人がいるのなら、それもまたひとつの生き方なのだ。僕が大口叩く理由なぞひとつもありゃしない。だから裏を返せばこんな生き方でも、僕の人生につべこべ文句を言えるのは、唯一無二、僕以外誰がいるだろうか?