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作品集

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放課後の背中



 本から目を離し辺りを見回すと、まだ2,3人の生徒が僕と同じように本を読んだり、何かを必死に書き付けたりしていた。
 栞を挟み本を閉じて席を立ち、長い廊下を歩いた。
それ程年季の入った校舎ではない為か、掃除が徹底しているのか、はたまた指導を受けた生徒のお陰か、いつも廊下はぴかぴかに磨かれていた。
 外へ出ると、5月のはつらつな風が吹き過ぎて行き、吹奏楽部の未熟なトランペットの音やら、体育館のバスケットボールをつく音と規則的なシューズの擦れる音と気怠げな女子の”ナイスシュート”という掛け声やら、校庭でどっかの顧問が怒声を飛ばし、それに返答した若い声やらを、僕の耳に届けた。
 
 昇降口を出てからも、校門を出てからも、比較的ゆったりとしたペースで僕は歩いていた。大抵の学校がそうであるように、僕の学校もすぐ目の前の道から進路は左右に分かれる。
 左手は隣接する大きめの公園へ通じるらしいのだが、僕は生憎一度も左へ曲がったことはない。右の方は、また3つに分かれる。自転車で10分弱の駅への道が2つあり、歩いて15分程度の駅への道がひとつ。僕はいつも後者のルートで帰る、所謂”電車組”というやつだ。
 校門を出てすぐ右へ折れ、並木通りを黙々と歩く。駅への道中には、薬局と公園、その隣の幼稚園、そしてまたその隣の郵便局くらいしかない、区画整理されたニュータウンだ。
 正直なところ、この風景は大好きだ。珈琲色の煉瓦らしきものがびっしりと敷き詰められた歩道も、交通量の少ない大通りも、生活感溢れる住宅街も。

作品名:作品集 作家名:もの