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ゴーストライター
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百戦錬磨 第一話

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あまりの急展開にさすがの和斗もついていけないのか、茫然と結菜を見つめていたが、すぐに冷静さを取り戻して言葉を返した。
「それは返す必要はない。それと男ならもう少し鍛えるべきだな」
そう言い残すと結菜はそのまま校舎の中へと消えていく。
「さっすが、会長。大居の名前を持っているだけのことはあるな!」
「そうね!さすが会長!もうめちゃめちゃかっこよかったわ!」
大居の名前、それはこの国では知らない者がいないほどに有名な家柄の一つである。なにせ大居と言えば帝国異能力者連合序列三位一条家とは遠縁の親戚関係に当たり、尚且つ、日本の象徴である天皇を守護する天皇直属の部隊に所属する者たちを大勢、輩出している家柄なのである。
いわば日本政府の根幹の一部と言っても過言ではない。そんな家柄の人間なのだ。知らない筈がない。
「・・・家柄・・・か」
結菜の姿を見送りながら和斗は家柄の違いといものを再認識してしまう。そして、その家柄がその家の者たちに何を与えるのか、ということも。
「・・・まぁ、今は放っておくか」
和斗は鼻を押さえたまま、桜が舞っている道を教室へ向かって歩いて行った。

校舎自体はかなり大きいがその中は案外ふつうで異能派国家となる前の公立高校と何も変わらない。一階は一年生が、二階は二年生、三階は三年生が使うところまで同じである。
(ってか、三年生が三階っておかしくねーか?一年生が三階で三年生が一階の方がいいだろ。わざわざ三階まで上がるの面倒だし・・・)
いくら和斗がそんなことを考えたところでそれが反映されるわけではないし、何よりも和斗は一年生でも三年生でもなく、二年生である。結局、一年生が三階を使おうが、三年生が一階を使おうが二年生は二階であることに違いはない。
だから、そんなことを考えていても無駄だということは分かっているのだが、毎朝、階段を登る手間を考えているとついつい考えてしまう。
二階に上がるとそこでは多くの生徒たちが明日の準備のために飾り付けの道具を一階や講堂へ運び出していた。
「へぇ・・・みんな頑張ってるんだな・・」
自分も手伝うことになる、ということがすっかり頭か抜け落ちているのか、他人事のようにその光景を眺める和斗。そんな中、目を吊り上げた女性教師が和斗を睨んでいることに気が付いた。
「やばっ!早く逃げ・・・」
しかし、その女性教師は生徒たちでごった返している中、一直線に和斗に近づき和斗が逃げる前にその襟首を掴んだ。恐るべき俊敏さである。
「こら、龍雅君!二年生初日に遅れてくるなんて、さぞかし立派な理由があるんでしょうね!」
和斗たちの担任でもある女性教師、山崎利奈は和斗を捕まえて怒鳴り散らした。その声に廊下にいた生徒たちは一旦、作業の手を止めたが、怒られている人物が和斗であると分かると、再び作業に戻っていく。
これだけでこの光景がまったく珍しくないのだということがわかってしまう。
「もちろんです!」
和斗はここぞとばかりに胸を張って言い返した。さすがにそこまではっきりと言い返されるとは思っていなかった利奈は少したじろぐ。
「へ、へぇ・・・だったら理由を言ってみなさい」
どうせ和斗が思いつきで口から出まかせを言ったと考えている利奈は和斗に負けじと強気で返す。
その瞬間、和斗の顔がにやりと冷笑を浮かべる。まるで、その言葉を待っていたかのように。
そして、和斗はその理由を説明し始めた。
「どうすれば利奈ちゃんを落とすことができるのかを考え―――ぐふぅ」
最後まで言い切る前に和斗は利奈からではなく通りがかった、というよりも一部始終を見ていた夏樹から重い一撃を食らっていた。
腹を押さえながらふらふらとした足取りで壁に背を当てて何とか倒れるのを防ぐ和斗。
その姿はまるで戦場で怪我を負った兵士のようだ。
「ふっ・・・やるじゃねーか、夏樹・・・いいパンチだ・・・」
和斗はそういいながら口元を拭う仕草をする。状況が状況ならかっこいいのかもしれないが、状況が状況なだけに挑発しているとしか言いようがない。
「あ、あんたは~~~~」
その言葉に夏樹が再び拳を作って和斗に迫る。
「ちょっ、おい!」
夏樹が和斗に追撃の一撃・・・いや、止めの一撃を放とうとしたところに利奈が割り込んできた。
「はい!そこまで!」
教師である利奈が割り込んで来れば生徒なら誰だって拳を止めざるを得ない。例に漏れることなく夏樹は和斗を殴れなかったことを残念そうにしながら拳を収めた。
「まったく・・・あなた達は仲が良いのか、悪いのかよく分からないわね・・・もう遅れてきた理由はいいから、龍雅君は荷物を置いて講堂で高橋君の手伝い。東雲さんは一年生の教室の飾り付けをお願いね」
「は~い」「はい」
利奈は二人が返答したことを確認すると、やはり明日が入学式で教師と言う立場上いつも以上に忙しいのか、和斗に理由の説明をさせずにさっさと階段を下りてその場を去って行ってしまう。
廊下でポツンと残される二人。
「・・・んで、何で殴ったんだよ」
階段を利奈が降りて行ったところで和斗は隣に立っている夏樹に問いかける。
「さぁね。そういうのは自分で考えなさいよ」
そう言い残して夏樹もまた利奈の後を追うように階段を下りていく。スレンダーなその体つきと黒髪のポニーテールが桜とよく映えていてその姿は可愛かった。
「・・・・」
「まったく、和斗。君はどうしてあんなに可愛くて、美人で綺麗な純情一途の女の子を放っておけるんだい?」
「うおぉっ」
突如、話しかけられた和斗は反射的に飛びずさって話しかけた人物から距離を取る。その動きは先ほどの利奈の俊敏さに負けず劣らずである。
「おいおい。そこまで驚くなよ。僕だよ」
「ん?・・・あぁ、潤か。驚かせるなよ」
和斗に話しかけた長身で細身の男、天城潤は黒縁眼鏡を中指で押し上げながら話を続ける。
「驚かせたつもりはないんだが・・・。和斗も講堂へ行くんだろ?」
話をどこかで聞いていたのか、和斗が講堂へ行くことを潤は知っていた。
「あぁ。荷物置いたらな」
「だったら、僕も付いていくよ。僕も講堂の手伝いに選ばれた口だからね」
「そうか、だったら一緒に行くか」
「あぁ」
和斗はさっさと自分の荷物を教室へ置いて潤と一緒に講堂へ向かった。