2006-2010 詩集Ⅰ『あさ』
10.
青色の空に陰が広がっている
けれどそれは、尚も昼の色そのままに
時計の針を疑うほどの鮮やかさ
茂みで蛙が鳴く
早起きの蝉もまた我が物顔で
置き去りの鶯は知らぬ振り
しかし白色だった雲ばかり足が早く
目を見張る速さで クリーム色が紅色に染まる
その色合いは不釣り合い
まるで
いつまでも長居する彼達を急かすように
まるで
自分達の居場所を知らせるように
そろり
蒼天に僅かに漆黒を注す
逃げていくのは今日の日ばかりではなく
行き先も行き着く先も
当てのないままに
息をころして
粛々と夏の空を滑っていく
軌跡だけが確かだった
夜の到来を臨みながら
『July 13, 2010 -- 紅雲』
作品名:2006-2010 詩集Ⅰ『あさ』 作家名:篠宮あさと