充溢 第一部 第十二話
第12話・7/7
その夜はまんじりとも出来そうにない。
騎士団らしき完全武装の数人とすれ違ったが、関わりがあるのだろうか? 恐ろしい事が起こっている事は間違いない。
寝支度を整えた頃、工房の扉が開き、息が止まった。見ればポーシャが立っている。
「一緒に寝る?」
黙ったままのポーシャを迎え入れる。
一緒に寝たいのはこちらの方だ――ポーシャは子供の顔をして飛びついてきた。
二人とも語らず、しかし、眠らず、時計の振り子が歯車を小刻みに制する。不安な夜だ。
布団の中で抱き合って、どれほど経っただろうか。ポーシャのお陰でうとうとしだしていた。かろうじて、啼鳥を聴く頃とは気付いた。
ポーシャがベッドを抜け出し、暫くしてまた戻る。トイレかな?
しがみついて来るので、抱きしめ返す。結局、昼近くまで、二人は眠る事になった。
作品名:充溢 第一部 第十二話 作家名: