舞うが如く 第3章 1~3
「残る浪士たちには、
警護役の、会津藩による後見が決まったそうだ。
将軍の上洛までは、あと十日あまり。
壬生の浪士たちは
会津藩主・松平肥後守容保公の預かりとなったときく。」
「会津ですか、山本覚馬殿のおられる・・・」
「山本殿は、
武田信玄の軍師を務めた山本勘介の末裔だそうだ。
武術を極めたうえ、最新式の洋式砲術の指導者だとも聞く。
またたいへんに、腹の据わった学者肌だという評判でもある。
いずれ、顔を合わせることにもなろう。」
「楽しみです。」
「はて?、
砲術には興味がないであろうに・・・
お前の本当の楽しみは、
沖田との行く末であろう。」
「あ・・・兄上!」
「もう隠すな、
歳三さんもすでに見通しておる。
わしは本隊と共に明後日、
京を発つが、お前は好きにするがよい。
ただし、壬生の浪士には、幕府の後ろ盾がなくなったうえに、
あくまでも警護役の会津藩の預かりの身となるのだぞ。
どのみち、行く先は多難であろうが、
いまさら案じても始まるまい。
では、まいる。」
良之助が、縁側より立ち上がりました。
作品名:舞うが如く 第3章 1~3 作家名:落合順平