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茶房 クロッカス その4

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 優子は照れたのか、俯いてしまった。
 俺は後ろから手を伸ばして、優子の肩をそうーっと抱いた。
 すると優子の頭が、スローモーションのようにゆっくりと俺の肩に落ちて来た。そのまま抱き締めてキスしたかったけど、優子の気持ちを考えてぐっと堪えた。
 しばらくその姿勢のままで言葉も交わさず、じっと暗い闇とその上に広がる空の星を見つめた。
 俺の今までの人生が闇で、これからの人生が星空のような、そんな気がした。
 今こうして優子の肩を抱いているだけで、この数十年間の寂しさの半分は癒されたような不思議な満足感を感じた。
 そして残り半分は、優子とこれから……。そう考える俺の想いは、十分可能性の枠の中にあるような気がした。

 ふと見ると、公園の中ほどに立っている大きな時計がすでに十一時を回っている。
「優子、娘さん一人で待ってるんだよな。そろそろ行こうか」
「あら、もうこんな時間なのね。何だか時間が過ぎるのがとっても早かったわ」
「あぁ、俺もだよ。また会ってくれるよな?」
「えぇ」
 優子は優しく微笑んでくれた。

 俺たちは公園を出て、駅へ向かって歩き出した。
 俺は優子を家まで送って行こうとしたが、すぐ近くだから大丈夫と言うので、少し心配ではあったが優子の気持ちを尊重して駅前で別れた。
 その後自宅に帰って寛いでいる時、優子から電話がきた。
 無事に着いて、もう少ししたら布団に入ると言っていた。
 俺はホッとして、その夜いつもより心安らかに眠りにつけた。