小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

茶房 クロッカス その4

INDEX|18ページ/37ページ|

次のページ前のページ
 

「――あいつらは、可愛い顔をした悪魔だったんだ!」
「それから数日後、悪魔が会社へやってきた。あの時サインした書類に勤務先を書く欄があって、そこに正直に書いた僕も馬鹿だったのかもしれないが、あいつら悪魔は会社に来て、僕を呼び出して脅迫したんだ。ありえない! 何もやってないのになぜ脅迫されなきゃならない? ねぇ、変だと思わないか? おかしいだろ!」

「あなた、お願い落着いて。で、その子は何て言ってあなたを脅迫したの?」

「何て? そんなの決まってるじゃないか!『金を出せっ、出さなきゃ会社の人に僕が痴漢をしたって言いふらす』そう言ったんだよ。あいつらの目的は最初からそこだったんだよ。何もしていない僕を痴漢に仕立て上げて、その上で僕から金を強請り取る計画だったんだよ。あぁぁぁ……僕は何てついてないんだ。あんな悪魔どもの罠に嵌るなんて……」

「ねぇ、それでどうしたの?」

「どうもしようがないじゃないか。その時は仕方ないから財布から一万円を出して渡したよ。可愛い顔の悪魔は嬉しそうに『ありがとう。そう来なくっちゃね。物分りが良くってラッキーだったわ』なんて、へらへらしながら言いやがった。そして『じゃあまた来るから……』そう言って仲間と連れ立って帰って行ったさ」
「冗談じゃないよ。また来るだってぇー! 僕は心の中で『二度と来るな!』って怒鳴ったよ」
「ところがどうだ……。それから毎日のように悪魔たちは会社にやってきて、僕に金を要求したんだ。僕の小遣いがどれだけかは、君が一番良く知ってるだろう? そんなに毎日来られて、その度に渡すなんてできるはずがないじゃないか! 会社の者だってみんなおかしいと思い始める。当然だろ?」
「それから一週間もしない内に社内で僕の話が噂になって、上司にまで伝わったんだ。僕は呼び出されて、事情を説明するように言われたよ。そして、電車の中でのことから順に話した。ところがどうだ。会社でも一緒だ。誰も僕の言うことなんて信じちゃくれない。いや、百歩譲って、もしかしたら信じてくれていたのかも知れない……。しかし、会社の体面を取ったんだ。そして会社に汚点を付けたとか言われて、僕は降格になった」
「はっ、笑っちゃうよな。これまでどれだけ僕が会社のために頑張って来たと思ってるんだ! そう思うだろ? 優子」

「あなた、会社の人や駅の人が信じなくたって、私はあなたを信じてるわ。あなたはそんなことをするような人じゃないもの。お願い、私たちのためにも元気を出して、きっとみんな分ってくれる時がきっと来るわよ!」
 
 そこまで優子は一気にしゃべると、ふぅーっと大きく溜息をつき、しばし間をおいてまた喋りだした。