王の光
「そうか……怖い思いをさせてしまったね。私たちがもっと早く敵襲に気が付ければ良かったのだが、まさか敵地と隣接していないロストクが海から攻められるとは思いもしなかった。本当にすまない」
「いえ、家族や友人たちが無事だと分かったので、大丈夫です。ただ、僕のせいでソ……ローラン中尉がケガをしてしまい、そのせいで、レアル大尉が……」
「君のせいなどではない。これは戦争だ。そのような甘いことを言っていると生きていけない世界だ」
テオドールの言葉に、空気が静まりかえる。おそらく彼が言っているのはもっともなのだろう。だが、軍人ではないジルには受け入れられなかった。
次に口を開いたのはソフィーだった。
「とりあえず今日は、彼をここで保護したいと思っています。私が使用している部屋の隣が空いていましたので、そこを使ってもらってもよろしいでしょうか。当然、艦内の移動は制限させます」
「ああ、構わん。ご家族には私から連絡しよう。ただしクリューガー君。中尉が言ったように、艦内の移動は制限させてもらう」
「どうしてですか」
「軍には、部外者に言えないこともあるのだよ。君は好奇心が旺盛そうだから、事前に言っておかないとな。君からは私と同じ匂いがする。君も、ザクールを見ると興奮するだろう?」
「はい、あの格納庫にあった新型の白いザクールは凄かったです!」
「バカ!」ソフィーが今までにないくらい慌てた様子で声を出した。「忘れなさいって言ったでしょう!」
何故怒られているのか分からずにジルが立ちすくんでいると、テオドールがゆっくりと近づいてきた。なんともいえぬその威圧感に押され、彼は思わず後ずさりする。しかしすぐに、何か細長い筒のようなものに背中を押された。
「既に知られてしまっていたか……」
「お父さんやめて! 彼は民間人なのよ!」
「だからだよ。よりにもよって、一番見てはいけない者だ」そしてテオドールは、さも当然かのように続けた。「残念ながら、ロストクでは民間人に犠牲者が出たようだ」