小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
てっしゅう
てっしゅう
novelistID. 29231
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

「夢の続き」 第九章 由美の再婚

INDEX|1ページ/4ページ|

次のページ
 
第九章 由美の再婚


「貴史さん、ゴメンなさいね。洋子の機嫌が悪くて」
「いいえ、いいんです。僕がきっと恭子ちゃんに親しく話し掛けたから、機嫌悪くしているんだと思います」
「そうなの?相手は初めて会った中学生の子よ。それもお父様とご一緒だったし」
「おばさんの前で裸になったことは謝ります。洋子には中学生でも小学生でも関係ないと思います」
「いいのよ、あなたの母親のような気持ちでいるから気にしないで。それより、そんな嫉妬深かったらあなたも大変ね」
「そうなんです。俺には洋子以外に女性を好きになったり、感心持ったり、まして身体を見たりするような事は絶対に無いのに、信用が無くて困ります」
「可哀そう・・・女はそういう部分が多かれ少なかれあるのよ。嫌いになったりしないでね。お願い・・・」
「おばさん!俺と洋子は約束しているんですよ。ずっと一緒にいるって。心配しないで下さい。それより、夕食を一緒にする修司さんってなかなかいい男性ですね。違います?」
「えっ?修司さん・・・そうね、素敵な方ね」

由美は気持ちを貴史に見透かされてしまったようでドキッとした。

「聞いていいですか?」
「何を?」
「おばさん、再婚は考えていないのですか?僕たちが結婚したら独りになってしまいますよ」
「嫌だわ、貴史さん、再婚だなんて。こんなオバサンなのに」
「そうは思ってないでしょう?可愛いですよ、まだまだ」
「まだまだ?ハハハ・・・貴史さんは褒め上手ね。洋子が羨ましいわ」
「洋子は褒めないんです。だから怒られているハハハ・・・」
「他人に気遣いがきちんとできる性格なのね。洋子も褒めてあげてね。女なんてそうしてくれれば許せるものなの」
「はい、でも子どもの頃からずっと遊んできたから、ついつい厚かましくなってしまうんです」
「そうよね、あんたたちは本当に仲が良かったものね。兄弟以上に感じられたわ」
「遠い過去から今の二人が結ばれる縁にあったんだと感じているんです。おじいちゃんが叶えられなかったおばあちゃんへの夢を僕に託しているような・・・」
「貴史さん・・・あなたって言う人は」

由美は貴史が本当に優しい男性だと改めて感じていた。自分が好きになってしまいそうな怖さを払いのけるように、席を立って窓際に移動した。


「貴史さん、薄暗くなってきて夜景が綺麗に見えるようになってきたわよ」
レースのカーテンを引いて、外を眺めながら由美はそう言った。

「ほんと!俺も見たい」
貴史は由美の傍に行った。
「本当だ!都会の昼間はどうって言うことないけど、夜は一変するね。広島の過去を考えるとこの明かりは絶対に消してはいけない明かりにすることが俺たちの責任だね」
「そうね、あなたたちの未来がここで起きた多くの犠牲者の強い願いになっているのよね」
「うん、俺と洋子がここにいるのは意味があるんだ。そしておばさんと修司さんがここにいることも意味があると思うよ」
「貴史さん、私なんかのこと考えてくれているの」
「そりゃそうだよ。いつかお母さんになるんだろう?誰よりも大切にしないといけないって思ってるよ」
「ありがとう・・・」

由美は嬉しさと、貴史の優しさと、切ない自分の気持ちに甘えるように貴史に寄り添った。

「お母さん!何してるの!」
後ろから大きな洋子の声がした。
「洋子!何してるって、貴史さんと外の明かりを見ているだけよ。どうしたの?」
「引っ付いていたじゃないの!」
「それは・・・誤解しないで。貴史さんの優しさについ・・・」
「つい、何よ!」
「洋子!何わけの解らない事で怒っているんだ。お前が怒っている相手は俺なんじゃないのか?」
「貴史は黙ってて!あなたも何でそんなに傍でくっ付いて立っているのよ!」
「なんだ?とばっちりか。お前本当に変だぞ。俺とおばさんが何をするって言うんだ!アホか」
「アホかはあんたでしょ。お母さんと引っ付かないで!」
「こんな風にか?」
貴史は由美の身体を両手でぎゅっと抱きしめた。

「信じられない!最低・・・」
「貴史さん、冗談がきついわよ。それじゃあ洋子が怒るわよ」
「洋子は何にいらついているのか知らないけど、普通に振舞えよ。俺が恭子ちゃんと仲良くするとでも思っているのか?」
「私以外は誰も見ないって約束したじゃない!忘れたの?」
「忘れてないよ。誰も見ていないじゃない。恭子ちゃんに声をかけたのは修司さんとおばさんと話が出来るようにしたかったからだよ」
「修司さんとお母さんと?」
「そうだよ。ピンと来たんだ、おばさんが修司さんを気に入っていることをね」
「お母さん!そうなの?」
「貴史さんがそう受け取ったのなら白状するけど、素敵な印象は持ったわよ。でもそれだけだから」
「洋子!お母さんの幸せも考えてあげろよ。俺たちだけ幸せになってもいけないって思うんだ」
「解んないじゃないの。修司さんの気持ちとか、どういう人なんだとかが」
「だからこれから食事をして考えるんだよ。そのきっかけを作ったことは悪いことか?」
「そこまで考えていただなんて知らなかったから。でも、お母さんとくっ付いていたのは何故?」
「またそこか!・・・俺にとってもお母さんだからだ」
「貴史さん!洋子誤解させちゃったわね。私が貴史さんの優しさに嬉しくなったからいとおしく感じただけなの」
「約束して、誤解させるようなことはしないって、貴史」
「解ったよ。お前もあまり深く考えるなよ。こっちに来い」

貴史は洋子の肩を抱きながら三人で窓の外を眺めていた。


夕食はホテルのレストランでコース料理を囲んだ。
修司は独身で恭子と二人暮しをしていると話した。由美も独身で洋子と二人暮しをしていると話した。話が進んでゆくうちに家も近くだし、東京に
帰ったら一度四人で遊びに行きましょうと約束するようになった。恭子は一人ぼっちだったが洋子が友達になってくれたのでこれからは寂しくない
と喜んでいた。娘の笑顔に父親の修司は由美との結婚を初めて意識するようになった。この人なら娘も懐くし、洋子がきっと姉のように優しくしてくれるだろうと
確信が持てたからだ。そして何より、目の前の由美は修司にとって今まで出会った誰よりも美人に感じられていた。この年齢で短いスカートを
穿いてスタイルのよさを見せ付けられて、男として気持ちが浮かれないはずは無い。おまけに洋子も母親以上に美人で申し分なかった。

食事が済んで部屋に戻ろうとしたとき、修司は貴史に言葉をかけた。
「父から聞きました。あなたが若いのに立派な考えを持っている人だとね。私はあまり父とは話さないのでこんなことをお願いするのも身勝手ですが、
是非また父を尋ねてやってください。費用は出しますから」
「修司さん、ありがとうございます。勇介おじさんは、あなたと恭子さんのことをとても心配されていました。東京に戻ったら是非由美おばさんと
仲良くして貰って、真剣に考えてくださいませんか?」
「まだお会いしたばかりなのでなんとも申せませんが、恭子は洋子さんをとっても慕って居るようなので、いい方向に進むと嬉しいと願っています」
「そうですか!おばさんはずっと一人だったのできっと修司さんのこと好きになりますよ。俺が言うのも変ですが、ハハハ・・・」