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世界は今日も廻る 4

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やっぱり馬鹿だ。この男。完璧な演奏ってのは、観客あってしかりの話。観客の望む音を出せなければ完璧なんて言葉使うべきじゃない。独りよがりの完璧は、ただの自己満足と欺瞞でしかない。と思う。まぁ、これは俺の持論です。つかこの馬鹿、いつまで俺を引きずる。そしてどこまで俺を引きずる。
ずるずると連れてこられた楽屋では、ニヤニヤしたタケさんと、同じくニヤニヤした崎本さん。その隣でそんな二人を嫌そうに見つめるイチさん。イチさんの隣はいただいた。
「あーちゃん、完璧。」
「ストリップよりも刺激的だな。」
意味不明だ。この人達、面白いけど時々オカシイ。非難したイチさんの隣で煙草を吸えば、無言で差し出される灰皿。ありがとうございます。
いつでもフラットで平坦で平常なイチさん、大好きだ。
「イチさん。」
「あー、煙草。」
「うん。これ吸ったら控える。」
「ん。」
イチさん、最高です。最高の癒しです。
「イチさん、ちゅーしません?」
言ってみるもんだ。押し付けられるイチさんの唇。先ほどとは違って、今度はほんのり温かい。さっきの氷みたいに冷たい唇も好きだけど、こうやって温度を持ってるほうが気持ちイイんだよな。キス、好き。
邪魔が入らないのをイイコトにイチさんと気の済むまでチューを堪能してから、最後にちょっとだけはむってしてから離れる。イチさん、唇つやっつやだし顔は綺麗だし。いいな、この人やっぱり。
薄笑いで目が笑ってない二城。この男、時々こんな顔をする。綺麗な、二城。いつもこの顔すればいいと思う。でも、あの真面目で不真面目で下品な顔も嫌いじゃないな。結局、顔が整っていればなんでも綺麗なんだろう。
「あ、あ、る。」
「んだよ、馬鹿。」
「ちゅー。」
突き出してきた唇に煙草を向ければ、危ないと笑って回避する馬鹿二城。学習能力はあるらしい。それでも、ちゅーっと言って差し出された唇を受け止める。
「もう嫌。この子。この馬鹿な子。」
「ザキ、嫉妬、駄目ゼッタイ!」
「黙れ馬鹿タケ。竹やぶに帰れ。パンダに食われろ。むしろ煮込んでやろうか。」
そんな感じの楽屋裏です。平常で何よりです。
作品名:世界は今日も廻る 4 作家名:雪都