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舞うが如く 第1章 1~4

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 父の源内は、医を業として、
母は、利根郡多那村の裕福な農家から嫁いできました。
夫婦仲は睦まじく、一男一女に恵まれましたが、
長男の房吉が6歳になろうとする矢先に、流行り病に冒されて
手当ての甲斐もなく、若くして母が亡くなりました。

 父・源内はおおくの後妻の話を断り続けます。
医業の傍ら、二人の子供の世話をする父と、祖母とに支えられて
房吉少年は、闊達(かったつ)に幼年時代を過ごします

 祖父の治佐衛門宅での、出稽古に訪れていた法神が
房吉を認めたのは、10歳前後の時でした。
ほかの子供たちよりも、頭一つ抜きんでた恵まれた体格と、
明らかに利発そうに輝く、その涼しい目元が、
ことのほか、法神翁には気にいったようです。



 少し勝ち気で慢心の傾向もありますが、
房吉少年は、常に明朗闊達に振る舞い、また辛抱も良く、
勉学にもいそしみ、何事にも秀でていたのです。


 祖父もまた、法神流の達人です。
最初は祖父に剣法を学びましたが、短期間のうちに頭角を現し、
たちまちのうちに師を越えてしまいます。
これより先は、法神翁が自ら竹刀を取り、
房吉少年に稽古をつける日々にかわりました。

 この天才剣士の出現は、地元の深山村はもとより
法神翁の多くの門下生たちを通じて、
早くも赤城周辺に、その名前が広まり始めました。

 15歳で寺子屋に入りますが、
同じころに桐生の絵師・鳳斎東里の門下にもはいります。
画名を孔聖劉霊といい、墨絵の世界でも
その非凡な才能を発揮しはじめます


 多岐にわたる修練を積むうちに、
わずか17~8歳にして文武に秀でた若者としての名声がひろがり過ぎたため、
さすがの逸材にも、序々に慢心の気配が漂いはじめます。