舞うが如く 第1章 1~4
(3)良之助と琴
やがて、この物語の主人公となる琴は、
まだ14歳の少女です
兄の良之助も父の道場で、将来を見据えて
鍛錬の真最中です。
しかし良之助の天分は、
このころから法神翁も認めていました。
密かに、特別の鍛錬の方法と、
修業のための項目が伝授されていたようでした。
その良之助が、
日々の階段の登り降りの鍛錬中のことでした。
ふと振り返った良之助の目に、髪をなびかせて
なだらかな坂道を駆け上がる、妹の琴の姿が見えました。
父から伝授された薙刀を背負い、
裾をからげた琴が、深山神社の境内へと続く、
もうひとつの長い坂道を疾走する姿でした。
軽快な足取りもまま、一気に境内まで達すると、
くるりと向きを変え、再び転げるように駆け降りて行きます。
そこへ法神翁が通りかかりました。
琴を見つけて思わず立ち止まり、その目を細めます。
良之助は登りきった高台から、
師匠に気がついて、直立で目礼を送ります。
坂道を降り立った琴を、法神が呼び止めました
作品名:舞うが如く 第1章 1~4 作家名:落合順平