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世界は今日も廻る 2

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ところ変わって、自宅。読んで字の如く、自分の宅。そうそれは間違えようのない事実にして真実。自分の家を間違えるほど俺は耄碌していない。だったら、耄碌しているのはコイツだ。ナニを当たり前のように人の家で寛いでんだこの男は。いくら俺が寛大で優しくて気遣いの出来るいい子だったとしてもだ、自分の家に侵入する異物を許可できるほどに許容範囲は広くないつもり。むしろ狭い、ブ千切って狭い。俺が俺を許容するのは俺が俺だからでまだイイとする。そこに俺以外の何かが侵入することを、俺は断固として許さない、それ故に異物は排除するに限る。
「ってことで、邪魔。」
蹴りだして玄関の鍵を閉める。表で鍵開けナイフが音を立てている間にチェーンを掛ける。それから、バリケードになりそうな物を探すけど、壊されてもイイモノはこの部屋に何一つ無いことに今更気づいた。今度邪魔になるけど無用のソファーでも買っておこう。忘れないように脳内のメモに書き込んだ辺りで、チェーンが不協和音を奏でる。それからキッチリ一分後、バキリと一つ有り得ない音を立ててチェーンが引きちぎられる。通常人間の握力はたかが知れているわけで、金属製のチェーン。もちろんこれは引っ越してすぐに闘犬を繋いでおくための頑丈なものに切り替えておいた。クリック一つで何でも買える現代の買い物事情に感謝。値段もリーズナブルでした。それを素手で引き千切るなんて芸当、そんじょそこらに転がっている一束幾らで籠売りな若者には出来ないわけで、やっぱりコイツは規格外な異常なんだと再認識。ここらで、足音荒く廊下を歩く音が聞こえる。
「なーに、人を蹴りだしてくれちゃってんの?ナニ?俺はお客様でしょ?お客様は神様でしょ?ナニを当たり前みたいにチェーンまで掛けてくれちゃってるの?それともなにか?お前は俺がいたら迷惑とでも言うのか?よろしい、ならば仕事は一人で行えばいいよ、コーディネーターが存在しなければ仕事そのものが無かったことになるのに?アシスタント無しでは碌に仕事も出来ないのに?それとも何か?俺の存在以上の存在を見つけた。とでも冗談言うつもりか?」
うーん、見事なまでの二重人格。この男、人をないがしろにして遊ぶのは好きなのだけど、人にないがしろにされて遊ばれるのは嫌いだというファンキーな人間だった。忘れてた俺が悪いのかもしれないけどね。遅刻するのは平気だけど遅刻されたら相手を追い詰めてとことんまで追い詰めて、それから逃がしてまた追い詰めて最終的には最悪で最低なそれこそ外道と呼ばれるような仕返しをするんだった。
「ごめん。」
「いいよ、それより仕事の細かいところ詰めようぜ。」
にっこり笑顔。それはまるで、人を馬鹿にするような真剣な笑顔。何度でも言おう。器用な男だ。
「それでハニー、この家はお客様に水の一杯も出さないの?」
「あ、忘れてた。」
コップに水道水を汲んで、それを差し出す。
「誰が水を出せと?」
「水の一杯でもって、言ったじゃん。」
俺は水道水そのまま飲む趣味ないから冷蔵庫からビール、当てはチーチクにしよう。コンビニ万歳。
「まぁイイ。それで、デリートはどうする?」
「んー・・・これってさぁ、こっそり系?見せしめ系?刑罰系?」
「やったことを考えれば見せしめが一番相応しいとは思うけどね。突っ込むなって警告を兼ねた見せしめ。」
「誰に警告を?」
そこ重要だろう。同業者に警告ならば、派手にはするけど秘密で済む。その他への警告ならば、派手にする必要はないけど単純にはいかな。分かる人間には分かるなんて状況は、こっちが作り出す舞台だ。だからこそ、警告相手の把握は必要不可欠。
「あー、この手の人間への警告。興味本位で踏み込むなって。」
「んー、じゃぁ割かしセンセーショナルに逝こうか。解体か、それとも散らすか、ドッチも面倒だなぁ。」
「いっそ揃って磔にでもするか?」
「それも面倒じゃん?殺してそのままさようなら、犯人は行きずりか物取りでって線が一番楽だなぁ。」
「仕事に楽を求めたらキリがないだろーよ。だいたい、俺たちの仕事は派手にやって何ぼだろ?」
「時と場合によるけどね。あー、マジで面倒。だいたいさぁ、不健康なんだよな。」
そう、この仕事に不満は沢山あるけど辞めようと思ったことはない。今更別の職種に転がったところで俺がそれなりの結果しか出せないのは分かっている。お金はもちろん必要だから、それなりに貰えればいいけど、俺は仕事に遣り甲斐を求める性質なもんで。生きがいは別にあるから、俺が仕事に要求するのは遣り甲斐と金だけ。
でも、時としてこの仕事はそれ以上のものを俺に求めようとする。曰く、名声とか地位とか、そんないつでも転がったり地に落ちるようなもの。それを我慢して、そこにだけ目を瞑ればイイ仕事なんだけどね。
「不健康だ。面倒だ。」
「いくら不平不満をのたまったところで仕事が無くなるわけでもないだろ。ほら、シャキシャキコーディネートを考えろよ。人間最悪なワーカーホリック。」
「仕事中毒と呼んでくれってか?しょうがない。一から十まで醜い悪あがきに敬意を評して、一から十まで陳腐で在り来たりな仕事にしてやろう。」
「具体案は?」
「二人仲良く揃って天国の門を作らせてやるさ。殺して殺して、それから解体して解体して、オマケに散らして磔てお仕舞いかな。」
「時間と場所は?」
「作業場で、明後日の夜。」
「明日でないの?」
「明日は駄目。先約があるもん。」
「先約?」
「ショーの予約があるから。お前も来る?午後からジャンクボックスでファッションショー、後に飲み会。」
「いいねぇ。それは楽しいことだ、うん重畳。」
「じゃ、取り合えず明後日の夜までは放置でいいよな?」
「かまわねーよ。どうせ急ぎの仕事もそうでない仕事も期日に代わりは無い。キッチリカッキリ期日までにお仕事終わらせてくれれば俺は何も言わないし、何もしないからね。ところで、俺にもビールをくれないかい?」
「あ、これ最後の一本だから。」
「お前マジで外道な。」
「お前に言われたくないよ、人外。」
作品名:世界は今日も廻る 2 作家名:雪都