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てっしゅう
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「新・シルバーからの恋」 最終章 夢の始まり

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思い起こせばこの一年間でいろんな事があった。去年の12月に徹と逢って中学の時からの想いを遂げた。お互いに結婚してはいたけど美雪は一線を越えてしまった。いやむしろ積極的にそうしていた。徹は自分だけに思いを寄せていると信じていたが、悦子ともそうなっていたことを知らされた。

揺れ動いた徹への気持ちに終止符を打ったあの日の出来事。生まれて初めて味わった男性への不信感と恐怖。助けてくれた悦子は仕事仲間であったと同時に恋敵でもあったから、複雑な思いに感じた。しかし共通の悲しみを越えて仲良くしてゆく間に強い絆が生まれた。自分がこうして店を持てたのも事の始まりは悦子との出会いだったと思うのだ。

美雪にとって夫、行則の存在は大きい。しかし、こうして悦子と昭子という仲間を得て一番感じる事は徹との縁だと思っている。

同窓会がもたらした徹との縁は悦子の人生も変えた。一通の案内状が届いたその日から思いもよらぬ感情が芽生えてしまった。好きだった徹が突然音信不通になったその日から、逃げるように今の夫と結婚した苦悩の日々がくすぶっていたのである。初めて身体が感じると思った徹とのセックス・・・しかしそれ自体が目的だったことが分かって、失望した。もう昔のような二人には戻れないと、切なさと悲しみが襲う。夢だけにしておけば良かったのかも知れない。でもこうして美雪や昭子と仲良く出来るのは、その辛さを乗り越えてきたからだと思える。

「ファンタジア」は地元に愛されてオープン10周年を迎えた。体力的に衰えを感じていた三人は、権利を譲って引退した。10年ぶりに二度目の同窓会を開いて徹を除く皆は昔話に花を咲かせた。シルバーからの恋を経験した美雪と悦子はそのことさえも忘れてしまったかのように、夫婦仲むつまじく過ごしていた。

何事も無ければ今の幸せな無かった。許されない恋に溺れて自分を見失っていても今は無かった。
何かが自分を変えたから今がある。それだけは間違いなく言えることだった。

ーーーーーーー新・シルバーからの恋 終わりーーーーーーー