理沙と武志
8ばん
昼休み。武志と良助は学食に来ていた。武志は無難な日替り定食、良助は多少の冒険をすることにしたようだった。
「モルモットメニューでよろしく、おねえさん」
調理のおばちゃんにそう言って、札を手渡した。
「いつもありがとね。ほんと、助かってるわー」
つり銭を良助に手渡しながら、おばちゃんは満面の笑みを浮かべた。そして、冷蔵庫を開けると、実に楽しそうに色々な材料を取り出し始めた。その様子を見ながら、武志は良助に小声で話しかけた。
「お前、よくあんなのの実験体になるな」
「甘いな」良助は馬鹿にしたような笑顔を武志に向けた。「材料から考えたコストパフォーマンスは抜群だ。それに、食えないものは出てこないぞ」
「そう思ってるのはお前だけだよ」
「よっ、しっかり食べてる?」
そう言って、理沙が武志に背後から抱きついた。武志は特に振り払うこともなく、そのままの状態で顔だけ後ろに向けた。
「これからだ。人体実験をする奴もいるけどな」
「おいおい、実験じゃないぜ。割のいい昼飯ってだけだ」
「じゃ、あたしもそれで」
理沙も良助と同じように札を出した。おばちゃんはますます嬉しそうにしながらつり銭を返した。
「今日のは自信作になる予定だからね、期待して待っててね」
「もちろん」
つり銭を受け取りながら、理沙も満面の笑顔で応えた。武志はあきれながら自分の定食を受け取って、さっさと席を確保しにいった。
「おい」良助はそれを見て、理沙に耳打ちした。「相変わらずあいつはノリが悪いな」
「あれでもだいぶ良くなったんだけど」
「そうだけどな。でも、もうちょっと頑張ってもらいたいだろ」
「別に、その微妙なところがいいんじゃない。あんたみたいな変態になったらやってらんないから」
「はいおまち!」
その会話を断ち切るように、おばちゃんが極めて見た目の悪い料理をカウンターの上に置いた。
それを持って、2人は武志が確保したテーブルに向かった。