信長、蘇生せよ、この悲観の中に
しかし、奈美は許さない。
「そう、そうなのね、高見沢さんてもうちょっと人間らしい人かと思ってたわ、残念ね、アンタはサイテイのカスだわ」
高見沢はここまで言われると、もう真剣に反撃せざるを得ない。
「ところで、そういう奈美ちゃんは、罪の意識なるものはあるのか?」
高見沢と奈美が向き合っている。
横には、腹から思いっ切り血が噴き出した信長の遺体がある。
目を伏せたくなるようなスゴイ事実が、そこにはある。
しかし今は、そんな出来事を少し棚上げし、もっと生身の男と女の激しい会話が続いて行く。
「もちろんよ、罪の意識もあるし、深い深い反省もあるわよ、それに比べ、高見沢さんは何の反省もしていないんでしょ」
女は間髪入れずに返して来た。
男は女のリズムに乗せられて、余計にムカッとなって言ってしまう。
「何を言ってんだよ、メッチャ反省してるよ、反省し過ぎだよ、ああ、ビジネスとしてね」
不思議なものだ。
男は興奮すると、時にポロッとホンネを吐いてしまう。
そして自ら墓穴を掘る。
女は、そこをまた容赦なく攻めて来る。
作品名:信長、蘇生せよ、この悲観の中に 作家名:鮎風 遊