信長、蘇生せよ、この悲観の中に
「それにしても、何度も申すが、ホント家康なんぞは、狡かったのう、拙者・織田信長と、それと朝廷が目の上のタンコブ、光秀が謀反を起こすということは、拙者・信長か、それとも朝廷か、そのどちらか一つが敗者となり、消滅するということだからなあ … 家康は高見の見物じゃ」
高見沢も奈美も「ふん、ふん」と聞いている。
「光秀が仕掛ける本能寺の変、家康も秀吉も、結局のところは、どちらが勝者になるかの様子見の観戦じゃ、その結果に従って、迅速に対応しようと二人は心構えしておったのじゃ」
「なるほど」と二人は合いの手を打っている。
「覇権王の拙者・信長か、それとも光秀のバックにいる朝廷/公家か、この二大勢力のどちらか一つが、この世の中から確実に欠け落ちることになるのだからのう … だから家康も秀吉も、目出度い話しと、胸躍らせておったのよのう」
信長はここまで真実を語ってしまい、「あーあ、人生五十年、夢まぼろしのごとくなり」と物憂げに呟いた。
作品名:信長、蘇生せよ、この悲観の中に 作家名:鮎風 遊