信長、蘇生せよ、この悲観の中に
「なあ信長、人間五十年、下天の内をくらぶれば、夢まぼろしのごとくなり … まあっ、よくある事だよ、こういう成り行きは不幸な話しでもあるし、だが考えようによっては、案外幸せな事なのかも知れないぜ、いいか、人生とは、思いと現実、それらはいつも四百年位はズレているものなんだよ、まあ、これも運命だと悟ってしまえば、軽い軽い」
高見沢は諭すようにこう話しているが、その顔には軍資金発見への期待の笑みが零れ落ちている。
一方信長は、ちょっとしたハズミで、こんな大事な秘密を平民の二人に洩らしてしまった、それを後悔しているのか、神妙な面持ちとなっている。
そして後はヤケクソ気味に、「一度言葉に出してしまったこと、仕方ござらぬ、高殿、奈美姫、わかり申した、株価上昇プロジェクトのために、涙を呑んで、愚民の其方衆(そちしゆう)と共に金塊を掘り起こそうぞ」と悔し涙を滲ませている。
「信長、お主、本当に悔いはないな?」
高見沢は信長にもう一度問い詰め、渋々頷くのを確認する。
「ヨッシャ! 善は急げだ、明日安土城に、金塊を掘りに行こう!」
これで高見沢と奈美の目標・日経平均三万円への希望がなんとか繋がったのだった。
作品名:信長、蘇生せよ、この悲観の中に 作家名:鮎風 遊