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信長、蘇生せよ、この悲観の中に

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そして、五月二八日。
それは本能寺の変の三日前の事だった。

京都嵯峨野の奥に愛宕山(あたごやま)がある。
そこは軍の神を祭る霊場。

その愛宕権現に光秀は詣で、連歌会を催して十五歌を詠んだ。
これが有名な愛宕百韻(あたごひやくいん)。
その初句は光秀の歌。

「時は今、雨が下(した)しる 五月哉」

光秀は、もともと朝廷を守る将軍・足利義昭、その幕臣の土岐源氏の流れだ。
この初句の意味の解釈は様々あるが、「土岐」氏出身の光秀自身を「時」と掛けた。
そして、「天が下知る」を「雨が下しる」と掛けた。

要は、「天が下」は天下であり、「知る」は支配のこと。
すなわち、「光秀自身が天下を治める五月かな」という解釈が出来、それが一般的だ。

光秀はこの句によって、信長に対しての謀反の堅い決意を、関係者に暗に表明をしたのだ。