信長、蘇生せよ、この悲観の中に
高見沢と奈美は、切腹したクローン・信長を本能寺の地下道に埋め戻して来た。
そして、その後幾ばくかの月日が流れた。
サラリーマン・高見沢一郎は普段の生活に戻っている。
とは言うものの、株価の方は未だ将来への明るさが見えず、ますますの落ち込み状況が続いている。
日本の株式市場は、完璧な連続悲観相場なのだ。
死に体状態で、そこからの脱出の兆候が全く現れ出て来ない。
そんな希望が持てないある日、高見沢はオフィスのパソコンの前に座って、ぼんやりと考えている。
あれやこれやの無価値な思考の果てに、溜息まじりの暗い独り言。
「あ〜あ、もうどうしょうもないなあ」
そしてさらに呟きは続く。
「さっぱり景気が良くならない、このドン底、いつまで続くのかなあ、これこそ、人類史上初めての究極連続悲観か、チャート的に言えば、今がまさにブル・マーケット(強気相場)への出発点であるべきなんだけどなあ、俺はそう信じたいよ」
作品名:信長、蘇生せよ、この悲観の中に 作家名:鮎風 遊