体温
消えた彼女
ちょうど一週間前のことだ。
滅多に怒ることのない俺が珍しく、彼女である美穂に対して怒鳴っていた。怒り方なんて知らない俺は感情のまま一方的に彼女を責め続けて、収まらない怒りをぶつけていた。
「巧……ごめん、ごめんなさい……」
美穂は何度も涙目になりながら震える声で必死に謝っていたが、その時の俺にとってはその姿が不快で仕方なくて、つい思ってもいないことを言ってしまった。
「もうお前の顔なんか二度と見たくない」
その時の、美穂の苦しそうに歪んだ泣き顔は今でもはっきりと覚えている。
その日を境に、美穂は本当に俺の前に現れなくなってしまった。
どんなに連絡してみても繋がるのは留守番電話サービスだけで、大学やバイト先にも全く顔を出さない。
「ただいま電話に出ることが出来ません――……」
今日も、聞き慣れたアナウンスが流れる。これを聞くのはもう何度目だろうか。
なにも言わずに消えるなんてことは初めてで、とにかく美穂のことが心配だった。
「なんで出ないんだよ……」
軽く舌打ちして携帯を閉じ、乱暴に頭を掻いた。
思い浮かぶのは、最後に見た苦しそうな泣き顔だけだった。あんなこと言わなければこんなことにはならなかったのに。悔やんでも悔やみきれない思いでいっぱいだった。
「美穂……」
名前を呼べば戻って来てくれる気がして小さく呟いてみたが、余計に美穂がいないと言うことを痛感させられて虚しくなる。
涙が出そうになるのをグッと堪えて、美穂に関する情報を少しでもいいから聞き出そうと、大学に向かった。