魔物達の学園都市
序章 はじめましては親子連れ
味気のない、白いエレベーターホール。
地下都市M四〇と地上とをつなぐその場所に、俺はたたずんでいた。
いや、まぁね。
永い地球の歴史の中で、こういうケースも多々あったさ。俺は恐竜じゃないけどね。
でも、実際にこうなってみると、恐竜の気持ちがわかる気がするんだ。
え〜、先日、親父が死にました。
お袋が早くに死んで、これまで祖父と一緒に俺を育ててくれた良い親父だったんですがね。
で、それによって俺は、この地下都市で唯一の人間となったワケなんですけれども。
まぁ、成人病の総合デパートみたいな親父でしたからね。
って、とりあえずいいか、それは。
ところがね、運命のいたずらっつーかなんつーか。
親父が死にかけてるその時に、ようやく地上の環境が千年ぶりに良くなったらしくてね。
親父は最期に、「お前はこれから、人類の歴史を背負って生きて行くのだ!」
とかね、なにげに重た〜い運命背負わされた俺なんですが……。
うん、いやまぁ、それはいいんだけれども、やっぱ一人じゃ寂しいでしょ?
幸い地下都市は世界中に点在してるから、俺みたいな生き残りも他にいるんじゃないかと。
ぶっちゃけ、地上を探検したいワケなんだよ俺は。
穴居人じゃあるめーし、もう地下暮らしは飽き飽きだ!
ってワケで。
「じゃ、行ってくるぜウズメ!」
俺は、この地下都市の管理AIに宣言すると、地上へのエレベーターに飛び込んだ。
「気を付けてね〜! カワイイお嫁さん連れてくるのよ〜?」
人類滅亡まで、あと『俺の寿命が尽きるまで』かも知れないのに、AIが呑気な声を出す。
まぁ確かに、プラナリアじゃねーんだから、俺一人じゃ人増えないんだけどさ。
とか考えてると、俺は不意に、自分に根本的に欠落しているものがある事を思い出した。
――そういや俺、嫁さんとか以前に、女って見たことないんだよね――