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てっしゅう
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「新・シルバーからの恋」 第十章 希望

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「もしもし、山下昭子です。先日はありがとうございました」
「昭子さん、電話ありがとうございます。少しはお元気になられましたの?」
「ええ、ありがとうございます。何とか普通に暮らせるようになりました。あなたが仰った話が気になりましてお電話したんです」
「そうでしたか・・・今ご自宅ですか?」
「ええ、そうですが」
「じゃあ、今からエリーゼに行きますから待っていて下さい。分かりますよね?駅前の」
「もちろんです。じゃあ今から出かけますので」

直ぐに美雪も来た。

「お待たせしました。昭子さんこの前とは違いますね」
「そうですか?どこがでしょう」
「表情が明るいし、お洋服も違うから・・・なんか別人みたいですよ。ねえ聞いていい?お幾つなの?」
「主人より2年下です。副島さんは?」
「あら!同い年だわ。淀川中学なの・・・昭子さんは?」
「同い年・・・そうでしたの。ずっと下なのかと思っていました。私は名古屋なの。父の転勤で高校からこちらに来たんです」
「ご両親はまだお元気なの?私は健在ですが弟が面倒を見ていますので今は離れて暮らしています」
「父は亡くなりました。母は兄が同居しております。まだ元気ですよ。副島さんはご主人お幾つなの?」
「はい、64です。再婚なんです実は・・・まだ二年目」
「そうなの!驚きましたわ・・・前のご主人とは?」
「協議離婚しました。聞いておられませんか?徹先輩の親友中山さんが夫でしたの」
「初耳ですわ・・・そうでしたの、剛司さんの奥さまだったの・・・こうしてお話ししていることも偶然ではないのね」
「そうよね・・・ご縁があったのかしら。そうそう、お話しって言うのはね、私今度今の仕事辞めてお店やることにしたんですの」
「独立ですか?」
「いいえ、全く別のこと・・・喫茶店やろうと思っているんです。昭子さん確か飲食関係にお勤めでしたよね?」
「ええ、良くご存知ね。パートだけどね」

美雪は徹から聞いていたから知っていた。

「私は店をやるといっても素人だから、コーヒーでお世話になる問屋さんのお店で研修させてもらうの。それでね、ランチなんかも作りたいからお手伝いして頂ける料理経験がある方を探しておりましたの。こんな事言っては不謹慎ですが、お葬式に行かせて頂いて、奥様のことどうかって思いましたの」
「主人から聞いていたのですか?私の仕事の事は」
「ええ、少しは・・・気になりますか?」
「亡くなった人のことを悪くは言えませんが、電気店を解雇されてから人が変ったようになりましたから、何か辛い事が他にもあったのかって・・・思っていましたのよ。ご存知かなあと思いまして」
「昭子さん、長く勤めていたお仕事を解雇されてショックだったんだと思いますよ。男性にとってそのことはかなりのことだと思いますから」
「そうですか・・・やっぱりそれが原因なのかしら。変な事を聞いてゴメンなさいね。喫茶店のお手伝いですか・・・素敵な夢を叶えられるのね。私でいいのかしら・・・こんなオバサンで」
「オバサンだなんて、言わないで下さい。きれいになれるわよ。一緒に居た悦子さんね?あの人もエステに通ったりしてとてもきれいになったの」
「平川さんね・・・そうね、徹さんの同級生なのよね・・・私も見習わなくちゃいけないのかしら」
「そうよ、女三人で頑張って流行る店にしたいの。手伝って頂けないかしら?」
「一人になっちゃったからね・・・これからどうしようって考えていたから、心機一転いいお話なのよね、きっと・・・平川さんはご存知なの?私が一緒っていう事?」
「大丈夫ですよ、お姉さんですから」
「そうなの?似てないわね」
「本当じゃないのよ、凄く世話になったから、本当のお姉さんのようにしてもらっているの」
「そう・・・そんな関係なの。羨ましいわね。余程何かあったのね・・・言わなくていいけど。私はOKよ。詳しくは決まったら聞かせて」
「ありがとう。助かったわ・・・後は場所と完成を待つだけね・・・楽しみだわ」

昭子は美雪と夫が仲良かったように受け取っていた。今は詮索しようと思わなかったが、悦子と三人で働くことに徹が絡む縁があったことを普通じゃないとは感じられた。

「あなた、一緒に働いていただける方が決まりましたのよ」
「そうか、じゃああとは店を早く決めないといけないね。誰と誰に頼んだの?」行則は美雪と一緒にお見せをやってくれる女性がなかなか見つからないんじゃないのかと心配していたから、ちょっと安心した。

「一人は悦子さんでしょ。もう一人はね、山下さんといって、この前亡くなった中学の先輩だった人の奥様なの」
「ふ〜ん、知っていたのか?前から」
「いいえ、初めてお会いした人よ」
「どうしてその方にしたんだ?」
「ええ、飲食店にお勤めだったから、きっと中の事がお出来になると思ったの。お聞きしたら、心機一転頑張って見たいって仰ったの」
「偶然だね、料理が出来る人が山下さんの奥さんだったなんて」
「うん、なんだか縁を感じたの・・・まだお葬式から一週間しか経ってないけど今言わなくちゃって、お話ししてよかった」
「そうか、後は早く場所を見つけて動かないといけないね」
「そうね、早く見つかるといいわね」

副島は世話にはなりたくなかったがこの際早く見つけたかったので、取引先の不動産業者に話しをして探してもらった。あくまで退職後に恩を引きずりたくなかったからだ。

「副島さん、ご遠慮なさらずにお申し付け下さいよ。お世話になった人なんですから。任せてください、直ぐに見つけますから」頼んだ業者の社長はそう言ってくれた。
「すまんな・・・私事で」
「いえいえ、三友さんと言えば、副島さんですから、同じことですよ、ハハハ・・・」
豪快な笑い声で直ぐに部下を呼んで当たらせてくれた。

三日もしないうちに連絡があり、枚方市駅から徒歩10分ぐらいの所にある小さな町工場跡地をどうかと言ってきた。早速美雪と車を走らせて見に行った。
「これは奥様・・・どうですかこの場所は?お気に召されたら、平地にしてお渡しします。それにしてもさすが副島さんだ。こんなお美しい奥様をお持ちだなんて・・・一流は違いますな、ハハハ・・・」

そう言われていい気分はしなかったが、場所はとてもいいと行則は思った。