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昔の事―ざんがい―

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(体験者:拓斗(たくと)+紫(むらさき)+朱音(あかね))





「この前さ、おかしなの見たんだよ」

 みたらし団子にかじりつきながら、友人のタクトは唐突に話題をふっかけてきた。同じ部屋の中にいた友人二人は、思わず同時に彼にきょとんとした顔を向ける。

「なんだよ、いきなり……」

 いぶかしげに眉をひそめて返事を返してきたフーガの方を向いてから、(バリトンは既に本の方へ顔を戻してしまったが、一応聞いているようだ)

「あのね」

 タクトはマイペースに口内を空にするためにもごもご頬を動かしている。そして、

「この前、池の側でのことなんだけど……」

 少しばかり困惑したように自分自身も短い眉をひそめ――近頃すっかり癖になってしまった首を片手でさする動作をしつつ――話しはじめた。

作品名:昔の事―ざんがい― 作家名:狂言巡