小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

舞~紅と黄金~

INDEX|3ページ/11ページ|

次のページ前のページ
 


マチコは、その手を払うこともできないほど、驚いた。
「あ、あ、あの」
「こんなことを期待して来た訳ではないですよね。あ、すみませんでした」
離れた掌の温もりがマチコの手の甲に残った。
「少し、散歩したくて」
「こんな暗い時間にですか?ましてやひと気のない公園に女性がひとりはどうかと」
「そ、そうですよね。すみません」
「いえ」
僅かな沈黙が二人のあいだに流れた。
「私、帰ります。お邪魔しました」
「送りましょうか。あ、明るい通りまで」
マチコが立ち上がると、男も立ち上がってそう言った。
「大丈夫です。失礼します」
「お気をつけて」
マチコは、振り返ることなく、落ち葉を踏みしめ、足早に公園を抜けた。

次の日の会社帰り、マチコは、あの公園の入り口で耳を澄ませた。
冷たい風が耳元をかすめても、落ち葉のカサカサという音は静かで、ひとの気配はしない。
マチコは、何かに期待している自分を笑った。
「ああ寒っ、早くうちに帰ろ」
踵を返し、マチコは寒い街を闊歩するように歩いた。

作品名:舞~紅と黄金~ 作家名:甜茶