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てっしゅう
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「哀の川」 第十一章 功一郎との恋

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第十一章 功一郎との恋


「お待たせしました!皆さんメリークリスマス!ハッピークリスマス!只今よりパーティーを始めます。楽しくお過ごし下さい」
直樹の挨拶で始まった。一人また一人と中へ客が入ってゆく。入り口で直樹と麻子は出迎えている。こんばんわ!と声をかけながら・・・

「久しぶりね、直樹さん!お元気のようね」
好子が来た。雪に合わせたかのような真っ白のパーティードレスに身を包んでいた。
「大橋さん・・・こんばんわ、いらっしゃいませ・・・」
後から入りにくそうに功一郎は立ち止まっていた。
「功一郎さん、いらっしゃいよ!来たかったんでしょう?」
麻子は今日功一郎が来る事を知ってはいたが、やはりこうして対面すると気持ちがドキドキしてしまった。
「やあ、麻子・・・じゃない、斉藤さん、結婚おめでとう!偶然入った好子さんのお店で君たちのことを聞いてビックリしたよ。もう少ししたらあちらへ帰るから、ちょうどいいタイミングだった。今日はゆっくりさせてもらうよ」
「はい、純一はすぐに出てきて演奏しますから、聞いてあげてください。さあ、中へどうぞ・・・」

功一郎は好子と一緒に席に着いた。なんだか仲良くしている様子にも見えた。準備が整って、会場に純一たちの子供合奏団が出てきた。割れんばかりの拍手で迎えられ、クリスマスメドレーを演奏した。純一の目には父功一郎と隣の女性が目に入った。やがて、杏子が出てきた。真っ赤なミニのワンピースで頭にとんがり帽子をかぶってみんなの前に出た。功一郎は目を見張った。それほど杏子はスタイルも良く綺麗に映っていたからだ。それに・・・若くも感じられた。好子は功一郎の表情をチラッと見て、少し気分を悪くした。歳には勝てないけど、自分の方がいい女だとの自負がある。ただ綺麗なだけの杏子とは違うんだとの思いであった。

演奏と歌が終わって、杏子と純一は二人の席にやって来た。
「パパ、元気だった。ボクは元気だよ。杏子姉さんといつも一緒に仲良くしてるの。ママも新しいパパと仲良くしてるよ」
「純一、大きくなったなあ・・・男らしいことを言うなあ、感心だ。そうだ、これは私からのプレゼントだ。またしばらく会えないから、大事に使ってほしい」
中身は時計だった。まだ学校へは着けて行けないけど、欲しかったからとても喜んだ。

「わ〜い、欲しかったんだ。パパ、ありがとう!気をつけて香港へ帰ってね。僕も元気にしているから・・・」
「ああ、純一も杏子さんに嫌われないようにするんだぞ。大事なお姉さんなんだからな。杏子さん、よろしくお願いしますね」
杏子は功一郎にそう言われて、嬉しかった。裕子が目立つお腹をして、二人のところへ来た。
「好子、良く来てくれたわね」
「裕子、おめでとう!今度は光男さんの子供を生めるのね・・・心から嬉しく思っているわよ」
「好子・・・ありがとう、あなたも功一郎さんと・・・じゃなかった?まだ先走りすぎかな」
「そうよ、そうなるといいけど・・・」

「じゃあ、皆さん、私はお店を開けないといけないから、帰るね。そうだ、暇があったら、直樹さんも唄いに来てよ、杏子さんと一緒にでも。麻子さんもね」
「うん、そのうちにね。今日はありがとう」直樹は麻子に遠慮して言葉を濁した。好子は功一郎と一緒にタクシーで帰っていった。道が混雑していて、お店についたのは20時を回っていた。何人かの常連客が店の前で待ち焦がれていた。

「ごめんなさいね、みなさん、お待たせして・・・道がすごく混んでいて、タクシーが動かなかったのよ。さあどうぞ中へお入り下さい」
好子の声に客は中へぞろぞろと入っていった。功一郎はいつものカウンターの席に着いた。好子の点てるコーヒーを美味しいと言ってくれる。薫り高いコーヒーの匂いが店内に充満する。しばらくして、杏子はやって来た。
「遅くなったわ、あ〜あ疲れた。私にもコーヒーを頂戴」

そのままの赤いミニのドレスでやって来た杏子に店の男性客はチラ見をしていた。カウンター席の高い椅子に足を組んで座っているから、下着まで見えてしまっているのである。気付かない杏子ではあったが、功一郎が耳元でそれを注意した。
「ありがとう、功一郎さん・・・恥ずかしいわ自分が」
優しい功一郎の気遣いにこの日も一段と好きになってゆく自分を感じた。

コーヒーを飲みながら、杏子は功一郎に話しかける。
「ねえ、功一郎さん、あなたのように優しくて気の付く人が、何故浮気なんかされたの?麻子さんに・・・」
「初めはね、君の言うとおりだったのかも知れない。仕事が儲かって沢山のお金を預かるようになると、凄いストレスで、休みの日は何もしたくなくなって来るんだよ。どこかへ逃げたくなる。家に居るとそれは出来ないから、何かと理由を付けて海外へ行ったり、旅行したりした。一人でだよ。家族と一緒に出かけたいと思わなくはなかったけど、自分のことを理解してもらう努力は怠ったね」
「そうなんですか・・・男性の気持ちはそうなんですかね、みんな?」
「ぼくと同じ様に考えている人は多いと思うよ。頭で動く男性と気持ちで動く女性との隙間を思いやりとか愛情で埋めなければいけなかったんだね」
「それが出来なかったということですか?」
「そうだね、出来なかった・・・してこなかった、というべきかな。金を自由に使わせてあげていたから、何が不満なんだ!って思いが支配してた」
「へえ〜そうなっちゃうんですね。別れた夫も同じ様な気持ちだったのかなあ・・・」
「杏子さんは離婚したの?いつ頃?」
「はい、もう5年目ですか。勤めていた会社の同僚の紹介でした。結婚には父や母は猛反対しましたが、直樹は喜んでくれました」
「ほう、直樹君はですか・・・じゃあ、離婚したときになんと言いましたか?直樹君は?」
「辛かったんだね、東京へ来る?と電話で言ってくれました」
「姉思いなんですね、彼は・・・いいご兄弟ですね。羨ましい・・・」

好子は二人の会話に入れなかったが、功一郎が親身になって聞いていることが、悔しかった。自分の別れ話を切り出して気を引こうとした。

「杏子さんも辛い思いをしたのね・・・わたしは主人だった美津夫さんに、直樹さんとの関係で問い沙汰されて、浮気相手の裕子との関係をすべて水に流そうと決めていたことが壊れたの」
「浮気していたの?直樹君と?」
「してないわよ、相談に乗っていたり乗ってもらったりしていただけ・・・それが浮気に取れるなら、仕方ないけど・・・まあ、最後は関係が出来たから、いけない女だったのよね」
「そうだろうなあ、ママさんはもてそうだから言い寄ってくる男性がいっぱい居たんだろうね」
「あら、お世辞も言うのね。そんなんじゃないわよ、もてていたら一人じゃ暮らしてないわ。ねえ、杏子さん?」
「そうですね、女も離婚経験して年齢を重ねると、慎重になるから、誰でもって言う訳にはいかないんです。子供はもう無理だから、少なくともわたしの場合はね、人間関係がしっかりと出来ていないと上手く続かないって思うわ」