夏風吹いて秋風の晴れ
「うん、惜しかったね。でも、あそこで、最後にきっちりいれてくるんだから、相手相当強いわ」
「そうだねぇー 悪いけど、 外れてぇーって思っちゃった」
直美が言いづらそうにだった。
「あっ、それ、俺もだから」
「うーん、シュート打ったあの子には許してって感じかな」
「いいんじゃない。それで」
顔を見合わせていた。
試合が終わって選手たちは2階席の応援来てくれた人達に綺麗に整列して頭を下げていた。
弓子ちゃんは、悔しそうな顔を少し浮かべていたけれど、きっちり、おばさんたちを見つけてアイコンタクトをしながら頭を下げていた。
それをみながら俺はあのぐらいのときには、そんなのとっても出来なかったと思っていた。
「あばさんたちに挨拶いく?」
直美に聞いていた。
「うーん。普通そうだよね」
「うん」
「なんかさぁー ほら、もういい家族だよねぇー」
「だねぇー」
普通というか、数ヶ月だけなのに、知らない人が見たら、まんま家族だった。
「あのさ、この前、豪徳寺から家まで歩いてる時にさ、たぶん、お豆腐屋さんの前だったんだけど、気づいたんだよね」
3日前のことを直美に話し出していた。
「なに?」
「あのさ、4人家族でしょ?叔母さんち。で、さ、4人とも血が繋がってないんだよね」
「えっ?」
「血は繋がってないんだよなぁー だぁーれも・・ってふと思ったんだよねぇー」
「そんなの今さら?」
「うん。なんか不思議な気がしたから・・さ」
「そうかなぁー?」
「うん。おっ、発見って思ったわけよ」
直美にいい終わったら少し笑われていた。
「劉は、なんか変わった家族だなぁーって思ったわけだ?」
直美に聞かれていた。
「まっ、そんな感じかもしれない・・」
「あのさぁー 私も劉も血は繋がってないよねぇ?」
「当たり前でしょ」
「でもさ、もしかして結婚したら家族だよね?」
「えっ?」
「もしかしてだからね」
「うん」
「私と結婚したら血は繋がってなくても二人は家族なんだから、そんなものは繋がってなくてもいいんだってば」
少し自信げに直美に言われていた。
「そうくるかぁー」
「うん。だから、子供とは血がつながってるのは普通のことかもしれないけど、でも、やっぱり、血なんか繋がってなくたって家族なんだってば。そういのも有り」
「それ、けっこう説得力あるわ」
「でしょ?」
笑顔の直美に言われていた。
「うん」
返事をしながら、叔父と叔母と純ちゃんが席から立ち上がったのを見ていた。
夏が来るまでは、目の前のその光景は思ってもいない光景だった。
現実ってすごいなぁーって思っていた。何があるかわからないってことだった。
それから、叔母さんたち家族に挨拶をして直美と体育館をあとにしていた。
弓子ちゃんの3位決定戦があるようだったけれど、直美のバイトが夕方からあったから理由を言ってだった。叔父にオマだけは見てけって、けっこう言われていた。
校門を二人で、外に出ようとすると、後ろから声をかけられていた。
走ってきた弓子ちゃんだった。
「直美さん、応援ありがとうございました。わざわざ見に来てくれたのに負けちゃった・・」
「うん、頑張ったんだからしょうがないよぉー 残念だけど・・。でも、また次の試合は見にくるから、言ってね」
直美が元気な声でだった。
「ありがとうございます。悔しいから今度は勝つところを見て欲しいから絶対ですよ」
「うん、大丈夫よ、また劉とくるから」
「はい、すいません、次にもう1試合あるから」
「知ってる。ごめんね応援できなくて。バイトなんだよね」
直美が答えていた。
「はい 聞きました。いそがしいのにすいませんでした。ありがとうございました」
「大丈夫だよぉー 頑張って次の試合はいっぱいシュート決めちゃってね」
「はい、夜に電話します!」
「うん、でも、9時半すぎじゃないと家にいないよぉー あっ、かけるなら劉んとこにしてくれる?たぶんそっちでご飯食べてるから」
「はい、そっちにかけます。今夜だけじゃなくいっつもそっちにいるじゃないですかー、相変わらず仲いいですね」
中学生に二人でからかわれていた。
「毎日じゃないんだってば」
直美が笑いながらだった。
「すいません では失礼しまーす」
言いながら弓子ちゃんは結構なスピードで体育館に向かって走り出していた。
前から思っていたけれど、とっても足が早かった。
夏風が吹いて頃に赤堤にやってきた中学生が、秋風の中を走っていた。
空も秋空で、なんだか、いい風景だった。
「従兄弟の劉さん、かわいい従兄弟に何も話さなかったねぇー」
直美に顔を覗き込まれて言われいていた。けっこうな近さだった。
「なんだそれ?」
「劉も、あの子と血はつながってなくても、従兄弟だもんね。大きく言えば家族」
「そうきますかぁー じゃあ 直美は?」
「私?そうだなぁー 血も繋がってないし、戸籍上は親戚でもないし、他人っていうのは変だし。で、友達って感じでもないし・・いいや、めんどうなので家族で。うん、私も大きく言えば家族ってことで。それ、けっこういい表現だと思う」
「ふーーん 家族ねぇー」
言いながら、すごいなぁーって思っていた。
こんな言い方をする直美は好きだった。
夏はやっぱり活動的で、秋になったら落ち着いて
そんな日本の四季のように赤堤のひとつの家族も時間を過ごしているのかもって気がしていた。
秋風の中の晴れた空は、あすも晴れるのか、それとも雨になるのかはわからなかったけれど、一緒に歩いている直美との今の時間がごくごく自然で嬉しかった。
僕たち二人は人から見たら家族に見えるのだろうか・・。そんなことも考えていた。
変かもしれないけど、僕たちは血は繋がっていなかった。
血がつながっていないことに感謝だった。
*********完結ってことで。************
夏風吹いて秋空の晴れ 完結
最後に時間がかかりました すいませんでした。
よろしければ
時系列のなりますが
「恋の掟は夏の空」
「恋の掟は春の空」
「南の島の星降りて」
「恋の掟は冬の空」
「ひとつの桜の花ひとつ」
「JUNOはきっと微笑んだ」
もお読みください。
作品名:夏風吹いて秋風の晴れ 作家名:森脇劉生