夏風吹いて秋風の晴れ
荷物を降ろして
クーラーも無事に取り付け終わって、床の掃除を終えて、1階の部屋の和室で座布団たたんで頭に当てると、知らない間に昼寝をしていたようだった。
「ただいまぁー おじゃましまーす」
直美の大きな声で起こされていた。寝転んだままで腕時計を見ると4時前を指していた。すっかり寝ていたようだった。
「劉ぅー いないのぉー 荷物降ろしてよぉー タクシー待ってるんだってばぁー」
「今行くー」
あわてて起き上がって玄関に向かっていた。
玄関に行くと買い物袋がもう置かれていた。
その横にはすくっと立って頭を下げた女の子だった。
「あっ、こんにちわ」
驚いて頭を下げて言葉にしていた。
「こんにちわ、ここに置いてもいいですか?」
両手の荷物のことらしかった。
「うん、いいよ、えっと、弓子ちゃんだよね、前に1回会ったよね」
「はぃ、覚えてますよ、直美さんの彼氏でしょ・・」
「えっ、あぁ、それでもいいけど・・・」
「えっと、まだ荷物が・・」
言いながら中学生は玄関を出ていた。入れ替わりに叔母が玄関に顔を出していた。
「劉ちゃん ありがとうね、悪いわね」
なんとなく、いつもより元気な声のような気がしていた。
「はい、あっ 後はやるから 叔母さんはあがっていいですよ、叔父さんどこだろ・・寝ちゃってたから、わかんないんだけど・・どっかにいると思うけど・・」
寝入る前はTVでゴルフ番組を見ていたようだったけど、起きた時には姿が見えなかった。
「あら、そう、どこかに行っちゃったのかしら・・まったく・・冷たいお茶でも入れるわね、ごめんね、もう少し荷物あるみたいなの、手伝ってあげて・・」
「はぃ」
返事をして、叔母は部屋に俺は玄関から外にだった。
黄色のタクシーのトランクが開いて、直美と中学生の弓子が荷物をおろしていた。
「これで、終わりです」
直美が手伝ってくれていた運転手さんに言いながら頭を下げていた。玄関先には降ろした荷物がいっぱいだった。
「弓子ちゃんは 家にあがってていいよ、あとはやるから・・」
直美が中学生にだった。
「でも、やります」
「じゃぁ、手にもてるのだけ持って、中にはいって・・あとは劉と私で持っていけるから・・」
「はぃ」
手にいっぱい荷物を抱えた中学生は、玄関から部屋の中にだった。すらっとした背中だった。
「一緒だったんだ・・知らなかった・・」
「私も、ビックリしちゃった。新宿に早く着いた叔母さんが電話で呼び出したみたい・・それで、新宿で後から待ち合わせだった」
「そっかぁ、一緒だって知らなかったから、さっき玄関でビックリしちゃった」
「ビックリすることないじゃない、従兄弟になるんだから」
手に荷物を持って笑顔を直美が見せていた。
「さっ、運んじゃお」
直美に言われて俺も荷物を抱えていた。俺の右手の荷物はカーテンのようだった。
「直美ちゃんも劉ちゃんも 荷物はそこに置いて、お茶にして・・買ってきたケーキ食べましょー」
玄関にたどり着くと部屋の奥から叔母さんの声がしていた。返事をして中にあがるとケーキーとお茶が用意されていた。アイスティーのようだった。やっぱり、叔父は家の中にはいないようだった。
「どこいっちゃったのかしら・・」
叔母が独り言を言い、俺はそれに首をかしげて答えていた。まったく行き先は思い当たらなかった。
「さぁ、いただきましょう、ここのっておいしいらしわよ」
叔母が言いながら勧めてくれたケーキはフルーツいっぱいのケーキだった。
4人で、おいしく頂いていた。
「叔母さん、クーラーもさっき工事終わりましたから・・」
「そう、よかったわ、まだ暑いものね」
「さっき、工事終わってから試したけど、音も静かだし、いいみたいでしたよ・・」
さすがに、高そうなクーラーだった。
「そう、よかったわ・・あの部屋西日が入るから、暑いのよね」
叔母がおいしそうにケーキを食べながらだった。もちろん直美も中学生もおいしそうにケーキを食べていた。自然のような、自然でないような・・俺が1番緊張しているような・・だった。
「ちゃんと、綺麗に掃除したの、劉・・」
直美に言われていた。
「綺麗かどうかは、わかんないけど、雑巾かけといたから、窓も拭いたし・・カーテンはすぐにつけられるよ、買ってきたんでしょ、さっきあったから・・」
「うん、かわいいよぉー これ食べ終わったらつけようか、劉?」
「いいよぉー」
「あつ、弓子ちゃんも一緒にね」
「はぃ」
横に座っていた中学生が元気に返事をしていた。叔母はうれしそうにそれを見ていた。
お茶を飲んで、少しゆっくりしてから直美と一緒に2階の部屋に上がっていた。
「どーれ、綺麗かかなぁー」
直美が窓に近付いて声を出していた。
「ここって入ったこと無いでしょ・・直美って」
「うん、初めて・・けっこう広いんだね」
「朝来たときは、机とか本棚あったから、そうでもなかったんだけどね・・ここにベッドもあったし・・」
「そっかぁ・・全部綺麗にしちゃったんだ・・叔父さん、さびしそうにしてなかった?」
「うーん、ちょっと、いつもより声は小さかったかな、でも、しょうがないでしょ・・大事なものは、とってあるみたいだったよ」
「そうだね、仕方ないね・・」
「どう?」
「どうって?弓子ちゃん?」
「そう」
「明るくていい子だよ、緊張はしてるみたいだけど・・」
「そっか、叔父さんはもっと緊張してるかもね・・叔母さんとは、何年か前からよく知ってるみたいだから、いいんだけどさぁー」
「大丈夫よ、心配しても始まらないでしょ、あっ、叔父さん歩いてる・・」
窓から外を見ていた直美の視線の先に叔父がこっちに向かって歩いていた。教会の角を曲がったところだった。
「どこ いってたんだろ・・」
「なんか、手に持ってるよ、叔父さん・・ほら、劉・・」
「なんだろぅ・・・」
確かに叔父の右手にはなにかぶら下がっているようだった。白い箱のように見えていた。
作品名:夏風吹いて秋風の晴れ 作家名:森脇劉生