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Flucht aus der Überwachung

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 僕は誰かの家で目を覚ました。何分、何時間気を失っていたかはわからない。しかし、太陽が見えた。一体どこかわからなかった。

 「やっと目を覚ましたのね。」

 女の声がした。ふと振り返ってみるとそこには16,7の女がいた。黒い服を着ていた。
 「誰だ?」
 僕は聞いてみた、すると、
 「わたしは緑川つぐみ。あなたは?」
 聞かれたので、しかたなく答えた。
 「戸川英一だ。」
 僕は聞いた。
 「ここはどこだ?」
 彼女は答えた。
 「南富士市よ。」
 僕は分からなかった。
 「何県だ?」
 「静岡県よ。」
 「嘘だ。僕は静岡出身だが、そんな市名は聞いたことない。」
 「いえ。2015年に合併して今年で市制100年を迎えるのよ。あんなにニュースになってるじゃない?もしかして、ニュースは見ない人?」
 僕は絶句した。―2015年に合併して今年市制100年?そうするとこの時代は2115年ということになる。ははっ、嘘だ。嘘に決まっている。僕は彼女に新聞を見せてほしいと言った。
日付を確認すれば嘘だとわかる。この女め、僕をだまそうとしても無駄だ。
 「新聞?何それ?」
 彼女の言葉に僕は驚いた。
 「もしかして、新聞知らないのか?」
 「そういえば、中学の歴史の時間に習ったわ。昔の人は、『新聞』っていうもので情報を得ていたって言ってたわ。今はもう『紙』なんていうものは使わないしニュースなんて今は電子手帳で見れるもんね。」
 僕は飛び上がり窓を開けて外を確認した。車が空を走っている。はるか空のかなたまで伸びているエレベーターがある。そして、みんな首にアンテナみたいのがついている。―
空に気球が飛んでいたそこには画面がついていた。見ると、「宮下総書記、平壌に訪問、テポドン記念像の除幕式に出席」というニュースが出ていた。そこには、
「第三次世界大戦の時、勝利の決め手となった朝鮮の核爆弾テポドン22号を称えるため平壌に建立したテポドン記念像の除幕式に枢軸国の一員として出席した。その後のアジア会議にも出席、アジア社会主義共和国連邦の建国に向けて一歩前進しました。」と、書いてあった。
しかし、僕が驚いたのはそこじゃなかった。その下には、「2115年11月24日11時23分配信」と書いてあった。

 ―この世界は、未来。104年後の、日本。― こんなことが、頭をぐるぐる駆け巡っている。

 その時、地面が揺らいだ。 窓の外を見ると、煙がもくもくと出ている。人々の悲鳴が聞こえる。

 「ヤバい、英一、逃げるよ!!!」
 「一体何があったんだ?」
 「国家治安維持軍の奴らよ。この辺は私たち『独立会』のアジトがあると知って攻撃してるのよ。」
 『独立会』?何だそれは?どんな団体なんだ?
 「何だそれは?」
 「私たちみたいな革命家が朝鮮の属国みたいな状況を変えるために立ち上げたの。日本は日本。ちゃんとした『国』なの。朝鮮の一部じゃないの。」
 「朝鮮の属国?何故だ?」
 「あんた歴史も知らないの?2045年から2095年まで第三次世界大戦があったのよ。その時日本は社会党が勝利して北朝鮮と国交を結んで選挙権と非選挙権を与えたの。その時北朝鮮から沢山の移民が来て政治家の立候補した人が増えたの。そしたら、いっぱい当選しちゃって。今じゃ8割が朝鮮系じゃないかしら。」
 「ふ~ん。」俺は適当に相槌を打った。
 「そして去年、日本保護法が適用されたの。経済レベルの低いに日本を助けるという名目で、朝鮮が属国にしたのよ。」
 「ふ~ん。2011年とは大違いだな。」
つい口走ってしまった。言った瞬間、彼女の動きは止まった。
 「えっ?どういうこと?」
 「えっ・・・。」
 僕はどもってしまった。でも、本当のことは言わなければならない。俺が、2011年から来たことを。
 「実は俺、2011年から来たんだ。ほら、免許証もあるぞ。」
 俺は免許証を見せた。
 「うそ、ほんとに2011年から・・・」
 彼女は俯いた。
 そして、意を決したようにこう言った。
 「私たちの仲間になってくれる?」
 「えっ?」
 「どうせ2011年にはもう戻れないのよ。だったら私たちの仲間になりなさい。」
 俺に、『独立会』に入れだと?
 「ちょっと銃撃を受けて死んだり爆撃を受けることもあるけど楽しいところよ。」
 俺に死ねと?今この人普通にやばいこと言いましたよね!?
 そんなことより、俺は2011年に戻れないのか・・・
 あんなこと、こんなこと、まだしてないことがある・・・
 いや、俺は死のうと思ったんだ。もうあんな世界から逃げようとしたんだ。
 なら、この新しい世界で俺はやり直せばいいんじゃないか?
 この世界で、やり直してみよう。
 「・・・分かったよ。入るよ。」
 「えっ、いいの?」
 「いいよ。この日本を立ち直らせよう。」
 「・・・分かったわ。準備はいい?」
 「・・・いつでもOKだ。」
 そういって、彼女と俺は鉄の雨が降る中を走り抜けていった。

作品名:Flucht aus der Überwachung 作家名:Kaz