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始まり

　雨が降っている。音を立てて降っている。僕はビルの屋上に漠然と立っていた。耳に水が垂れる感覚がある。髪から水滴が落ちてくる。服が肌に張り付いている。でもそんなの関係ない。この僕、戸川英一は今から死ぬのだから。
　
　僕はフェンスを乗り越える。この世界に、絶望した。政治家は金を求める。男は理想の女を求める。女は玉の輿になりたがる。こんな世界にもう僕はいる意味はない。遠くからカラオケの下手糞な歌が聞こえる。最高のBGMだ。この場面にふさわしい。
　
　僕は飛び降りた。風が気持ちいい。空を飛んでいるみたいだ。これで、死ねる。そう思ったのだ。


　　その瞬間、僕は光に包まれた。　真っ白いまぶしい光。　僕は気を失ってしまった。