LAST CHAPTER
「響の言うとおり。お前にはこれから今まで以上に良いことが起こんだよ」
「へこんだら俺らのこと考えればいいから。俺も大地もいつもお前のこと考えてるし。これからも一緒だろ」
笑って遥を励ますことが俺と大地に出来る最後の役目。
遥の背中を押すためなら、どんな悲しみも前向きな言葉に変えられるような気がした。
「ありがと、大地」
「いーって。元気で頑張れよ」
「うん。響も、ありがとう……」
「おう」
振り返れば、そこには沢山の思い出がある。その記憶はずっと三人の中に残り続けるはずだ。
(だからせめて、ありがとう、と。俺も言うよ。心から。)
夜が明けていく。
隣の遥は、濡れた頬を手で拭うと、そっと立ち上がって深く息を吸い込んだ。
その瞳には、煌めく海の光が映り込んでいる。
今度は大地が立ち上がり、大きく伸びをした。
そのまま両手を広げ、風を全身に受けながら、気持ち良さそうに目を細める。
俺もその場に立って、崇高な空を仰いだ。そこには見たこともない、美しい青が広がっていた。
とても幸せな朝を迎えた俺たちは、この切なさを抱えて明日も生きていく。
だから、忘れないだろう。
最後に見た、美しい海の輝きも。君の声も、体温も。その穏やかな笑顔さえも。
ずっと、ずっと。忘れないだろう。
[ LAST CHAPTER ]
(それは夜明けの光に消えていった愛しい物語。)
作品名:LAST CHAPTER 作家名:YOZAKURA NAO