短文(食)
「だからさぁ」
彼は左手に持ったフォークを、ゆらゆらと揺らしながら喋る。
目の前の食卓には、本日の昼食である春キャベツとベーコンのパスタと、有り合わせで作ったサラダが二人分並んでいる。
僕は彼の話を聞くふりをしながら、フォークで丁寧にパスタを巻き取っていく。
鮮やかなパステルグリーンのキャベツには、塩気の強いベーコンがよく合う。
それを口に運び無言で咀嚼する僕の内心のため息は、きっと彼には聞こえていない。
よしんば、聞こえよがしにため息を吐いてみたところで、彼のことだから都合よく、聞こえなかったことになるのだろう。
高級レストランの一流シェフが三回回ってワンと鳴いたあと、号泣しながら土下座をキメてくれそうな料理の腕を持つ彼だったが、自身の趣味である犯罪心理学の知識を食卓で披露する癖はまだ治らないらしい。
それの何が悪いって、話の中では最低でも六回は人が死ぬし、そのうちの半分は口にすることも憚られるようなスプラッタだった。
僕は彼が言うところの「まるでキャベツを半分に割った断面みたいなんだよ、人間の脳みそって」という台詞を聞いて、ようやく食事を諦めた。
彼は左手に持ったフォークを、ゆらゆらと揺らしながら喋る。
目の前の食卓には、本日の昼食である春キャベツとベーコンのパスタと、有り合わせで作ったサラダが二人分並んでいる。
僕は彼の話を聞くふりをしながら、フォークで丁寧にパスタを巻き取っていく。
鮮やかなパステルグリーンのキャベツには、塩気の強いベーコンがよく合う。
それを口に運び無言で咀嚼する僕の内心のため息は、きっと彼には聞こえていない。
よしんば、聞こえよがしにため息を吐いてみたところで、彼のことだから都合よく、聞こえなかったことになるのだろう。
高級レストランの一流シェフが三回回ってワンと鳴いたあと、号泣しながら土下座をキメてくれそうな料理の腕を持つ彼だったが、自身の趣味である犯罪心理学の知識を食卓で披露する癖はまだ治らないらしい。
それの何が悪いって、話の中では最低でも六回は人が死ぬし、そのうちの半分は口にすることも憚られるようなスプラッタだった。
僕は彼が言うところの「まるでキャベツを半分に割った断面みたいなんだよ、人間の脳みそって」という台詞を聞いて、ようやく食事を諦めた。