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家に憑くもの

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Ⅲ.姉



「ただいま~。」
翔太がドアを開けながら、だるそうに言う。家の中は静まり返っている。人の気配は無い。
翔太は玄関から廊下に上がろうとして、いつも玄関の隅に立て掛けてある素振り用の金属バットが無いことに気付いた。
「ちぇっ、またおふくろかよ。」
翔太は母親が片付けたのだろうと考え、小さく舌打ちすると、靴を脱いで廊下に上がった。廊下の突き当たりはキッチンに通じるドアで、その少し手前がリビングへのドアになっている。リビングとキッチンもカウンターをはさんで繋がっている。翔太はスリッパもはかずに廊下を歩き、突き当りのドアを開けてキッチンに入った。
キッチンには誰もいない。キッチンのカウンターから見渡せるリビングも無人だ。
翔太は冷蔵庫のドアを開けると、牛乳のパックを取り出した。パックの口を開き、直接口を付けて飲み込む。母や姉がこの場にいたら、絶対にできない飲み方だった。
その時、天井から足音が聞こえた。思わず牛乳が口の端から垂れ落ちる。
「やべっ。」
翔太は慌てて手の甲で口を拭いた。天井からは、微かに足音が聞こえる。
「ねえちゃん、帰ってたのか。今日は友達と買い物して来るとか言ってたのに。」
翔太が耳を澄ませると、微かな足音に混ざって、金属と木をこするような音が聞こえる。
「あいつ、なにやってんだ。」
翔太は呟くと、牛乳を冷蔵庫に戻した。キッチンからリビングに出ると、さらにリビングから廊下に出た。そして廊下を数歩玄関方向に歩き、階段を上る。
佳織の部屋のドアは閉まっていた。部屋の中からは、相変わらず金属と木をこするような音が聞こえる。
翔太は自分の部屋に入ると、カバンを部屋の隅に放り投げ、ベッドに倒れこんだ。携帯電話を取り出して、いつものサイトをチェックする。そうしているうちに、眠たくなって来る。
翔太は大きなあくびを一つすると、目を閉じた。佳織の部屋からは、不思議な音が聞こえ続けている。
なんだか、その音を聞いていると、眠くなるようだった。
やがて翔太は、全身がベッドにめり込んで行くような感覚とともに、眠りに落ち込んで行った。
作品名:家に憑くもの 作家名:sirius2014