家に憑くもの
「うわっ」
翔太は慌てて体を反転させると、反対側に進んだ。しかし、すぐにその目の前に紺色のソックスを履いた足が現れる。翔太は体を反転させるが、もう這い進めなくなっていた。せめて頭だけでも守ろうと、額を床にこすりつけ、両腕を頭に回し、頭部をカバーする。他には何も考えられなくなっていた。
そのとき、玄関のドアが開く音がした。
翔太は上目使いに玄関を見た。玄関には、背後から強烈な光を浴びて全身が陰になった少女が立っていた。翔太には、それが逆光の女神に見えた。
「おまえ、なにやってんの、そんなとこで。」
逆光の女神が、口を開いた。
「なにをって・・・」
翔太は頭を覆っていた両腕を解き、後ろを振り返った。そこには、誰もいなかった。
ただ、翔太の足元の廊下に、1本の金属バットが転がっているだけだった。
作品名:家に憑くもの 作家名:sirius2014