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カナカナリンリンリン 第一部

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バスを降りるとすぐに目指す滝への案内板があって、私はその方向に歩き始めた。薄曇りではあるが真夏だ、やはり暑い。それでもしばらく歩くと木陰に入り涼しく感じられた。やがて水音が聞こえ沢沿いに道が続いていて、緩やかな流れの所に砂州と岩とでできた広い場所があった。若い夫婦が犬と一緒に沢の中で戯れている。一瞬私も沢に降りてみようかと思ったが、日陰ではなく暑そうなのでやめた。小さな滝とまでは言えないが段差を流れる沢を見ながら歩いた。

やがて前方にそれは見えた。思っていたより大きな滝だ。私は自然と早歩きになって近づいて行った。手前に東屋があったので、とりあえずベンチに座って滝を見ながらスポーツ飲料を飲んだ。滝はよく見ると、かすかに段になっていて三段あった。遠くからみるとそれは分からない。

木製の小さな橋を渡り、岩をいくつか乗り越えて滝壺の前に立った。水は絶え間なく飛沫をあげながら落ちていた。濡れた岩肌が太陽の光を浴びて光っている。主流を外れて流れている細い水筋も見える。周りの樹々が酸素を吐き出し濃密な空気を作っているように感じた。滝壺の前の岩に座ってずうっと滝を見上げているカップルがいる。

少し離れた所に、まるで祭壇の前に立っているかのような姿勢で、何かをつぶやいている老人がいる。かなりの水音がしているはずなのに、私にはもうBGMとして慣れてしまっていて、動きはあるものの依然として同じ形を保っている滝に見入っていた。

思い出したように私は、背負っている子供に見せるかのように横を向いてリュックを滝に向けた。リュックには軽く無口になった妻がいる。他人がみたら不自然なかっこうをしながら、しばらく顔を横に向けて滝を眺めた。