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冬の奇跡-私だけのサンタクロース

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 またそれだった。私はもしかしたら本当に美雨はサンタクロースだったのかもしれない、そうとすら思い始めていた。啓と別れた私へのサンタクロースでありプレゼント。美雨と過ごせた時間こそがプレゼント。そう思った。そしてすぐに私たちは私たちが出会った公園に辿り着く。そして私たちは特に何も言うことなく自然にブランコに腰をかける。静かな公園にはブランコの音だけが響き、夜空にはオリオン座が輝く。私は、伝えてはいけないと思ったことを口に出す。きっと伝えても結果は変わらない。でも今伝えなければ伝えられないから。
「ねえ美雨。あなたこの後行くところあるの? もしないなら私の家にずっと居ても」
 しかしその言葉は途中で遮られる。
「それは出来ないの。そうしてしまったら私の来た意味はなくなってしまう。私はプレゼントを与えたら消えなければいけない。サンタクロースってそういうもの」
「じゃあプレゼントなんていらない! プレゼントが何なのかは知らないけれど、美雨と一緒に居られるのなら欲しいものなんてない!」
「違う。玲は私と一緒に居ても幸せにはなれない。あなたを幸せにするのは……」
その時言葉を遮るように公園の中に砂を擦るような足音が響いた。そこにいたのは啓だった。口から誰に向けるでもない言葉が漏れる。
「啓……なんで……」
「お前こそなんでここに……」
 そこで私は隣に気配がないことに気付き横を見た。美雨はそこにはいなくて、後にはただブランコが風に揺れるだけだった。
「ねえ啓……そこに今女の子が居たよね? 銀色の髪の毛で白いワンピースを着た女の子が、居たよね?」
「俺にはその女の子は見えなかった。俺からも一つ聞いていいか? さっきまで俺の横に玲が言ったのと同じ姿の女の子が、居た、よな」
「私が啓に気付いた時には誰も居なかったよ」
「そうか……玲。頼みがある」
 私にはなんとなくその頼みが分かるような気がした。そうすれば、全てが繋がる。
「やっぱり好きだ。玲がいないと辛い。俺ともう一度付き合ってくれ」
 それに対する返答なんて一つしかなかった。
「ありがとう……こちらこそお願いします」
 そうしてクリスマスの夜。私たちは、もう一度やり直すことになった。

 啓に話を聞いたところ、啓は昼間に美雪と名乗る少女に出会い、言われるがままに公園へ出向いたと言う。美雪という少女は心が読めるかのように啓の心境を言い当てたという。そしてまた、自らをサンタクロースと名乗ったらしい。私は美雨がすべて私の妄想なのかもしれないとすら思った。しかし部屋をいくら探しても、あの本は見付からなかった。それ以外、美雨が居たという痕跡はこの世界に何も残されていなかった。美雨は確かにこの世界に居たし、まだどこかに居るんだろうと思う。そうしてまた来年のこの季節にはどこかの人に幸せを届けるのだろう。私は冬の冷たい空気に向かって小さく呟いた。

「さようなら、私のサンタクロース」