「新シルバーからの恋」 第八章 ハワイ
第八章 ハワイ
展望レストランの席に二人は座った。遠く生駒の山から中ノ島のオフィスビル群の灯りが見渡せる場所であった。
「綺麗ね・・・行則さん。私たちのオフィスも見えるわね」
「ああ、そうだね。素敵な場所だ」
「何飲みます?ワイン?ビール?」
「そうだな・・・ビールで乾杯して、水割りにしようかな」
「私もそうします・・・今日はこの前のようにはなりませんから」
「頼むよ・・・いいお酒にしよう」
食事が運ばれてきた。口を付けながら、結婚式の話になった。
「ねえ、ハワイで式挙げることで宜しかったですわよね?会社の上司に報告しましたからその予定でいますよ」
「もちろんだよ。日にちが決まったら教えてくれるかい。休み取るから」
「はい、ちょっとミステリーツアーのようにするらしいですわよ。泊まり先も、観光先も秘密にするって・・・出発の関空と帰りのホノルル空港の時間だけ教えるって言ってましたの」
「何それ?まるで夫婦で行く何とかツアー見たいじゃない?」
「そうなの、酒井さんって言うんだけど、その上司の結婚式が終わってからご一緒に関空からハワイに行くんですけど、集合時間以外は一週間の荷物だけ持って来るようにと案内するだけだって」
「美雪はパスポート取らなくてもいいのかい?ボクは持っているけど」
「持っていますよ、前回10年で取ったから」
「そうなの。どこに行ったの?」
「早紀が結婚する前に韓国に行ったの。ちょっとブームだったしね」
「今も多くの女性が行くよね。エステとか焼肉かな」
「そうみたい。買い物も楽しいしね」
美雪は知っていたハワイでのホテルの事は言わなかった。反対されたくなかった理由とちょっと面白いって自分は考えていたからだ。
食事を終えて部屋に戻ってきた。いつもよりお酒を控えていた美雪はすでに何かを期待していた。行則と初めての時は殆ど覚えていなかったから、今日が初めてとも言える。レースのカーテンを引き窓一面に飛び込んでくる夜の大阪の灯りは、ダイアモンドのようなきらめきをプレゼントしてくれていた。
「シャワー浴びてくる」美雪はそう言ってバスルームの方に行った。ドアーを開けて中に入り衣服を脱いでバスタブに入った。
「あの時もこうしていたのよね・・・思い出すことなんかないと思っていたけど、身体が忘れてないのかしら熱くなってきたわ」そう感じながら、熱いシャワーを身体にかけてゆく。恐怖心が消え、徹のことも少しは記憶の中に残されていた。「あんなことをしていた、だなんて・・・つい最近なのにもうすっかり昔のことのように思うわ」
身体はシャワーの熱でどんどん火照って行く・・・
バスタオルを巻いて髪は濡らさずに浴室から出た。
「行則さんお先に・・・あなたもどうぞ」
「ああ、そうする」
ベッドに横になって、毛布を掛けてすでにバスタオルを外して裸で待っていた。行則はバスローブをまとってベッドに入ってきた。
「美雪、お待たせ・・・おまえ」すでに裸になっていることに気付いてちょっとドキッとした。
「行則さん・・・はしたなく思わないで。美雪は我慢できないの・・・」
「いいんだよ・・・」
58になっているとはいえ、まだまだ性的なことには若い美雪を自分では満足させられないと自信をなくしかけていた。最初の時は美雪が泥酔状態だったのでただ黙って受け入れてくれたが、今日は期待されているように感じるからプレッシャーになった。
行則はバスローブを脱ぎ捨てて、美雪にかぶさった。すでに火が点いていた美雪は直ぐに声を出して反応した。中に入ってくるとその声は一層大きくなった。行則はあっという間に果ててしまった。小さな声で「すまん」と言って謝った行則の頭を撫でながら、「いいのよ・・・ずっとこうしていて」せめて強く抱きしめて欲しいと思った。
長い間二人は強く抱き合っていた。
行則は自分が情けなく思っていた。亡くなった前の妻にも、「あなたは自分だけなのよね」と言われたことを思い出した。美雪は何かを悟ったのか、
「行則さん。ゆっくりでいいの・・・少しずつ長く楽しむようにしてゆきましょうね。焦らなくて構わないから。美雪も努力するからね」
「ありがとう・・・情けないよ、自分が・・・」
「ううん、得意じゃないことがあってもいいのよ。美雪は全部解かっているから・・・自信だけ失くさないでね」
美雪の優しさが身に沁みていた。
恵子の新婚旅行として計画されたハワイ旅行は、旅行社との話し合いもまとまってパンフレットが出来上がっていた。連絡をして悦子と美雪そして伸子の4人で詳しい事を話し合おうと集まった。
「遅くなってごめんなさいね。出来上がったの・・・配るから見て」そう言って恵子は旅行社からの印刷物を皆に手渡した。
「あら!何これ・・・どこに泊まるとか書いてないじゃないの」
伸子はそう質問した。
「ええ、そうなの・・・実は向こうに着いてから発表するというミステリーツアーにしたの。面白いでしょ?」
「恵子・・・美雪さんたちって式挙げるんでしょ?それは解かっているのよね?」
「うん、ちゃんと予定しているのよ。詳しくは言えないけど任せて」
「ならいいけど・・・どこに泊まるのかしら・・・初めて行くけど、ハワイって砂浜が広がっていて綺麗な海なんでしょ?」悦子は想いをめぐらせていた。
「そうよ、でもこの歳だからビキニで泳ぐ事は出来ないわよね」
「ハハハ・・・ビキニね。無理よ、それ以前に水着が無理・・・」
「そうでもないわよ。外国の人っておばあちゃんでも堂々と着て入ってらっしゃるから」恵子の答えに美雪が反応した。
「じゃあ、私ビキニ着るわ。向こうでかわいい物買おうかしら。皆さんもご一緒なさいません?」
伸子が、「あなたとは違うの。私と恵子は無理・・・悦子は痩せているからまだいいかも知れないけど」
恵子が、「失礼なこというのね。美雪の言うとおりみんなで買いに行きましょうよ。殿方きっとびっくりされるわよ」
「ビックリならいいけど・・・げんなりすると思うよ、きっと」
「悦子、それはないわよ。ハワイだもの。気候も違うし雰囲気も違うし、何より開放的になれるから大丈夫よ」
「私たちって・・・こんな歳なのに怖い話ししているわよね」
伸子のこの言葉にみんなで大笑いした。
美雪一人が知っていた二組で泊まるという企画はきっと受け入れられるような気がしていた。それはみんなが楽しそうな雰囲気になっていたからだ。
悦子は家に帰ってから夫の順次にハワイでは水着を着てビーチに出ると話した。ちょっと驚いた表情で「本当にか?」と返事をした。
「あなた、どういう意味なの?」
「だって60だろう、みんな・・・そんな女の人きっといないよ。若い人たちばかりだよ」
「恵子が外人はみんなそうしているって言うのよ。日本じゃないから構わないんじゃないの?誰に会うわけでもないし。それにこんな時でもない限り、水着で泳ぐなんて出来ないでしょうから・・・」
「そう言えばそうだけど・・・俺たち男性も泳ぐんだよな?醜い腹出して」
「フフフ・・・そうよね、そちらの方も気になるよね。それからね、泊まるホテルが聞かされてないのよ。何でも着いてからのお楽しみなんだって。ミステリーツアーって言ってた」
展望レストランの席に二人は座った。遠く生駒の山から中ノ島のオフィスビル群の灯りが見渡せる場所であった。
「綺麗ね・・・行則さん。私たちのオフィスも見えるわね」
「ああ、そうだね。素敵な場所だ」
「何飲みます?ワイン?ビール?」
「そうだな・・・ビールで乾杯して、水割りにしようかな」
「私もそうします・・・今日はこの前のようにはなりませんから」
「頼むよ・・・いいお酒にしよう」
食事が運ばれてきた。口を付けながら、結婚式の話になった。
「ねえ、ハワイで式挙げることで宜しかったですわよね?会社の上司に報告しましたからその予定でいますよ」
「もちろんだよ。日にちが決まったら教えてくれるかい。休み取るから」
「はい、ちょっとミステリーツアーのようにするらしいですわよ。泊まり先も、観光先も秘密にするって・・・出発の関空と帰りのホノルル空港の時間だけ教えるって言ってましたの」
「何それ?まるで夫婦で行く何とかツアー見たいじゃない?」
「そうなの、酒井さんって言うんだけど、その上司の結婚式が終わってからご一緒に関空からハワイに行くんですけど、集合時間以外は一週間の荷物だけ持って来るようにと案内するだけだって」
「美雪はパスポート取らなくてもいいのかい?ボクは持っているけど」
「持っていますよ、前回10年で取ったから」
「そうなの。どこに行ったの?」
「早紀が結婚する前に韓国に行ったの。ちょっとブームだったしね」
「今も多くの女性が行くよね。エステとか焼肉かな」
「そうみたい。買い物も楽しいしね」
美雪は知っていたハワイでのホテルの事は言わなかった。反対されたくなかった理由とちょっと面白いって自分は考えていたからだ。
食事を終えて部屋に戻ってきた。いつもよりお酒を控えていた美雪はすでに何かを期待していた。行則と初めての時は殆ど覚えていなかったから、今日が初めてとも言える。レースのカーテンを引き窓一面に飛び込んでくる夜の大阪の灯りは、ダイアモンドのようなきらめきをプレゼントしてくれていた。
「シャワー浴びてくる」美雪はそう言ってバスルームの方に行った。ドアーを開けて中に入り衣服を脱いでバスタブに入った。
「あの時もこうしていたのよね・・・思い出すことなんかないと思っていたけど、身体が忘れてないのかしら熱くなってきたわ」そう感じながら、熱いシャワーを身体にかけてゆく。恐怖心が消え、徹のことも少しは記憶の中に残されていた。「あんなことをしていた、だなんて・・・つい最近なのにもうすっかり昔のことのように思うわ」
身体はシャワーの熱でどんどん火照って行く・・・
バスタオルを巻いて髪は濡らさずに浴室から出た。
「行則さんお先に・・・あなたもどうぞ」
「ああ、そうする」
ベッドに横になって、毛布を掛けてすでにバスタオルを外して裸で待っていた。行則はバスローブをまとってベッドに入ってきた。
「美雪、お待たせ・・・おまえ」すでに裸になっていることに気付いてちょっとドキッとした。
「行則さん・・・はしたなく思わないで。美雪は我慢できないの・・・」
「いいんだよ・・・」
58になっているとはいえ、まだまだ性的なことには若い美雪を自分では満足させられないと自信をなくしかけていた。最初の時は美雪が泥酔状態だったのでただ黙って受け入れてくれたが、今日は期待されているように感じるからプレッシャーになった。
行則はバスローブを脱ぎ捨てて、美雪にかぶさった。すでに火が点いていた美雪は直ぐに声を出して反応した。中に入ってくるとその声は一層大きくなった。行則はあっという間に果ててしまった。小さな声で「すまん」と言って謝った行則の頭を撫でながら、「いいのよ・・・ずっとこうしていて」せめて強く抱きしめて欲しいと思った。
長い間二人は強く抱き合っていた。
行則は自分が情けなく思っていた。亡くなった前の妻にも、「あなたは自分だけなのよね」と言われたことを思い出した。美雪は何かを悟ったのか、
「行則さん。ゆっくりでいいの・・・少しずつ長く楽しむようにしてゆきましょうね。焦らなくて構わないから。美雪も努力するからね」
「ありがとう・・・情けないよ、自分が・・・」
「ううん、得意じゃないことがあってもいいのよ。美雪は全部解かっているから・・・自信だけ失くさないでね」
美雪の優しさが身に沁みていた。
恵子の新婚旅行として計画されたハワイ旅行は、旅行社との話し合いもまとまってパンフレットが出来上がっていた。連絡をして悦子と美雪そして伸子の4人で詳しい事を話し合おうと集まった。
「遅くなってごめんなさいね。出来上がったの・・・配るから見て」そう言って恵子は旅行社からの印刷物を皆に手渡した。
「あら!何これ・・・どこに泊まるとか書いてないじゃないの」
伸子はそう質問した。
「ええ、そうなの・・・実は向こうに着いてから発表するというミステリーツアーにしたの。面白いでしょ?」
「恵子・・・美雪さんたちって式挙げるんでしょ?それは解かっているのよね?」
「うん、ちゃんと予定しているのよ。詳しくは言えないけど任せて」
「ならいいけど・・・どこに泊まるのかしら・・・初めて行くけど、ハワイって砂浜が広がっていて綺麗な海なんでしょ?」悦子は想いをめぐらせていた。
「そうよ、でもこの歳だからビキニで泳ぐ事は出来ないわよね」
「ハハハ・・・ビキニね。無理よ、それ以前に水着が無理・・・」
「そうでもないわよ。外国の人っておばあちゃんでも堂々と着て入ってらっしゃるから」恵子の答えに美雪が反応した。
「じゃあ、私ビキニ着るわ。向こうでかわいい物買おうかしら。皆さんもご一緒なさいません?」
伸子が、「あなたとは違うの。私と恵子は無理・・・悦子は痩せているからまだいいかも知れないけど」
恵子が、「失礼なこというのね。美雪の言うとおりみんなで買いに行きましょうよ。殿方きっとびっくりされるわよ」
「ビックリならいいけど・・・げんなりすると思うよ、きっと」
「悦子、それはないわよ。ハワイだもの。気候も違うし雰囲気も違うし、何より開放的になれるから大丈夫よ」
「私たちって・・・こんな歳なのに怖い話ししているわよね」
伸子のこの言葉にみんなで大笑いした。
美雪一人が知っていた二組で泊まるという企画はきっと受け入れられるような気がしていた。それはみんなが楽しそうな雰囲気になっていたからだ。
悦子は家に帰ってから夫の順次にハワイでは水着を着てビーチに出ると話した。ちょっと驚いた表情で「本当にか?」と返事をした。
「あなた、どういう意味なの?」
「だって60だろう、みんな・・・そんな女の人きっといないよ。若い人たちばかりだよ」
「恵子が外人はみんなそうしているって言うのよ。日本じゃないから構わないんじゃないの?誰に会うわけでもないし。それにこんな時でもない限り、水着で泳ぐなんて出来ないでしょうから・・・」
「そう言えばそうだけど・・・俺たち男性も泳ぐんだよな?醜い腹出して」
「フフフ・・・そうよね、そちらの方も気になるよね。それからね、泊まるホテルが聞かされてないのよ。何でも着いてからのお楽しみなんだって。ミステリーツアーって言ってた」
作品名:「新シルバーからの恋」 第八章 ハワイ 作家名:てっしゅう