かわいそうなお姫様
ある日、宿に訪れた兵士がお城で開かれる舞踏会の招待状を盗み、娘にプレ
ゼントしました。凛々しく見目麗しい王子様がお后様を探してることは噂に聞い
ていましたが、娘は足が痛くて求婚のダンスを踊れません。
高価な宝石もドレスも持ってない。
でも、王子様と素敵な恋ができるかも知れないと思った娘は上客に頼み込んで
支度を整え、初めて見た人間のように絹糸で仕立てたドレスに着飾り、王子様に
会いに行きました。
前に出す度に激しく痛む足は、あと一歩のところで破れそうになり娘は噴水で
足を冷やして休むことにしました。そこへ現れた王子様は美しい娘を一目見る
なり恋に落ちて、ふたりは月に隠れて愛し合いました。
そして王子様は茂みに分け入り、光を集めて輝く宝石のような娘の瞳に心を
奪われ、お后様にすることを約束しました。
たのしい時間はあっという間に過ぎて朝になり、金細が施された大きなベッド
の上で、まだ熱が覚めやらない王子様に抱かれる娘は人間に生まれ代わり初めて
感じる幸福に包まれ、もう自分は海の泡になりはしないと思いました。
しかし、王子様は隣の国のお姫様と結婚することが決まり、娘がどれだけ泣い
ても聞き入れてはくれませんでした。