あやめるゆび
「ごめんね…矢城。ごめん、ね…」
嗚咽を繰り返しながら矢城に何度も謝る。急に手首が痛み出すのを感じながら、幾度も幾度も。
腕が痛くて仕方がない。今まで感じなかったはずの痛みが包帯の下から私の皮膚を蝕んでいく。
痛い。痛い。痛い。
けれどこの痛みが感情の糧にも思えた。きっと私は痛みを知ることすら出来なかったのだ。矢城が助けてくれたから、痛いのだ。
死にたい、と思った。
でもいつだって、死ねなかった。
私は、矢城がいたから、生きてこれたの。
作品名:あやめるゆび 作家名:YOZAKURA NAO