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転罰少女と×点少年

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「私、あなたみたいな、浅はかで恥知らずな人間には付き合いたくないの」
 何故俺は、初対面でここまで言われなければならない?
 まあいい、こういう、トゲがあって、俺に拒否感を示してた女子だって何度も落としたことはある。とりあえず見た目はSランクなんだから、適当に話を合わせていこう。
「――――呆れた。これだけ言われてもなお、外面が気に入ったからっていう理由だけで、会話をしようという気になれるのね」
「外面だけじゃないさ、中身だって――」
「嘘でしょそれ。まだ会って5分にも満たないのに、あなたは外見以外で、私の何を知っているって言うの?」
「それは……いまから知っていくことじゃん。少しずつ」
「――へえ。少し話して少しずつ私のことをわかった気になったら、付き合うの? それともまずは付き合ってみて、彼女のことを知っていこうだなんてことを考えているの?」
 挑発的な物言いを、あくまで冷静に、機械的に言う赤月。俺は、言葉に詰まる。
 その単調なやりとりの中で鈍く光る赤い瞳が、さらに俺の気持ちを不安定にさせた。
「……」
「はっきり言ってしまうとね、私、あなたみたいな人が存在してることが気持ち悪いわ。だから私、あなたに呪いを掛けてみようと思うの」
「は?」

「――こっちを向いて――……」

 言うやいなや、いきなり彼女は俺の顔を両手で掴み、顔を近づけてきた。あ、何気に身長高い。背伸びも何もせずに、177はある俺の、口許まで届きそうだ。俺を視る赤い眼が、鮮やかに光っている……そんな錯覚がする。
 え? なんだこれ、なにこの状況。だって、これ……どう見ても、その、キスだよな。
 あれだけ初対面うんぬん説教を垂れておいて、呪いを掛けるだの何だの言っておいて、やることは何? キス?
 おいおいびっくりさせるなよな、
「余計なことは、考えないで」
「!?」
 その目の光がいっそう強いものになったと感じたときには、彼女と俺の唇が触れあって――。
 そして、全てのものが暗転した。



「…………?」
 これが、呪い? 何にも起きてないじゃないか。色々言っていたが所詮只の人格破綻のイタい子だな――――――そう思って眼を開けたとき。






         俺と熱く唇を合わせているのは、どう見ても60を超えた醜い爺さんだった。






「え、あっ、お……おげえええええぼぐっ、っげおおええええええええええええ!」
 なんだ? なんなんだよなんなんだよこれ!?
 急いで体を離し、ジジイとキスした唇を拭う。念入りに吹いた。畜生、うがいしたい今すぐしたい。
「どうかしら。若きを老いに、美を醜に、男を女に転じさせる、これはそんな呪いなのだけど」
 目の前にいる、女子の夏服を着たジジイが、聞くに堪えないしわがれたれた声でそう告げた。
 だがその口調は、紛れもなく、赤月霞のものだった。
「呪い……」
「そう。これを解くためには、様々な人間と恋愛をし、ここに書かれている『のろいかうんたー』の点数を、30点集めなさい。その頃には、呪いを解くことを考えてあげてもいいわ」
「呪いカウンター?」
「そう。これがその『のろいかうんたー』よ」
 おもむろに赤月は、持っていた学生鞄から牛乳パックを切り開いた残骸を取り出した。
 そこにはマジックでかかれた、『のろいかうんたー』『0』という下手くそな字があった。
「これはあなたが持ってなさい。破ったり、燃やしたりしたら、あなたはその時点で呪いを解く資格を失うわ」
 ぽす、と小学生の工作にも劣るようなおもちゃが、俺の足下へ投げられた。
「…………わけが、わからねえ……なんで……」
 ただ目の前にいるジジイが気持ち悪かった。
「なんで、って、だからあなたみたいな人がいるのが、許せないからよ」
 不揃いな顔立ちの爺さんは、鳥肌が立つくらいの満面の笑みを作った。

 状況は全く飲めないが、どうやら今日が、俺にとって忘れたくても忘れられない日になるのは間違いない。
作品名:転罰少女と×点少年 作家名:ragy