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第三章二話

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その時に一宮君がやってきた。
「墨田、どうだ?」
「うん・・・時々うなされてるけど・・・」
「・・・・」
「ねぇ、前に僕に教えてくれたでしょう?墨田の友達がたくさん死んだって。」
「あぁ。」
「敵兵に殺されたの?」
「・・・・・・」
「僕の友達も敵に殺された・・・僕を庇って・・・僕、そこで意識がなくなって・・・気がついたら寝かされてて・・・皆は口をそろえて気絶したっていってたんだけど本当のことはまだ、教えてもらってないんだ。」
一宮君は僕の話をただ黙って聞いていた。
すると
「俺達はこれからフィリピンに向かおうかとしているときに、イギリス軍に襲撃されたんだ。
全員で船に乗ることは不可能だった。
そして2班3班と班長だけが残り、俺達4班だけこのフィリピンへ死に物狂いでやってきた。
砲撃の雨はいつまでも止むことを知らず、ただ、早く終わることだけを願っていた。」
そんなことがあったなんて・・・僕ははじめて知った事に驚愕した。
そういえばここの班は2~4班だったと聞いていたからなんでかなと思ってたけど・・・
「このフィリピンに無事にたどり着くためには連合軍の船をまかなければいけねえ。
随分遠回りをしてこのフィリピンへとやってきた。
しかし俺達の精神はそこまで強くなかった・・・
そこからはもう、毎日が死とのサバイバルゲームみたいなもんだった・・・」
「死との・・・サバイバル・・・」
「ある者達は死ぬために殺しあった。
ある者達は叫びながら海へとおちていった。
またある者達は全員の食べ物に毒を仕込んで自殺し、ある者達は奇声をあげながら剣を振り回して死んだ。
日が経つことに精神がおかしくなっていく連中が増え、俺達は成す術もなかった・・・
そんなときのことだった。」
「・・・・・」
「警鐘が鳴り響き、先般に出てみたら、仲間同士で殺し合いをしていた。
そして俺達にも襲い掛かってきて・・・仲間同士で戦うことになった。」
その時僕はこの話を聞いた中で一番背筋が凍ったような気がした。
だって、僕の目の前の仲間は皆、狂ってなんかいない。
そんな自殺者なんていない。
仲間同士で殺しあう人もいない。
だけどこの人たちは・・・・墨田は・・・・敵の恐怖の前に味方の恐怖におびえなければいけなかったのか。
「墨田は狂った仲間に押さえ込まれ、剣を振り上げられた瞬間・・・自分の剣で仲間の胸を貫いたんだ。」
一宮君は何かを思い出したかのように目を閉じた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「グギィィィィィィ」
「やめてくれ・・・お願いだ・・・」
「ガアアアアアアアアアア」
「うわあああああああああああああああ」
バシュン
「墨田!!」
「あ・・・・あ・・・・」
「ど・・して・・・・・」
「うわああああああああああああああああああああっ!!!」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

っ!!!・・・・それから三日後のことだった。
やっとこのフィリピンにたどり着いた・・・
だがその時にはもう墨田は誰とも口を聞こうともしなくなった。
毎日毎日あの悪夢に悩まされても誰にも相談せずに・・・・一人でずっと・・・・」
僕は涙がポロポロと落ちてきた。
一宮君は少し驚いたが優しい顔になりハンカチをかしてくれた。
「お前みたいな奴が同じ部隊にいてくれてよかった・・・・
あいつがお前に一言でもしゃべった姿を見て俺はお前なら墨田を元に戻してくれるんじゃねえかと思ってるんだ。
もちろん、俺も協力する。
おねがいだ、墨田は本当は強い奴なんだ。
そんな奴を失いたくないんだ。」
一宮君・・・・かっこいいな。と。僕は思った。
そして、本当に仲間想いなんだなと改めて感じたんだ。
僕は眠ってる墨田を見て思ったんだ。

墨田、この部隊は皆お前の話を聞いてくれる奴らばかりだよ。
だから、一人で抱え込まないで、僕や皆に話して。
そして、一緒に乗り越えていこうよ。
だって僕達は―――――――仲間―――――――だから

作品名:第三章二話 作家名:sanze1991