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海竜王 霆雷 銀と闇4

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 二郎神の犬も同様だ。深雪が、華梨のために摘んでいた花を齧って食ってしまったから、怒った。「ごめんなさい、しろっっ。」 と、犬を降参させて、それから、もう一度、花を摘んで、犬が食べたいのなら、と、さらに別に花を摘んで食べさせていた。それを見ていたから、二郎神も、叱らなかった。むしろ、なんとも可愛い次期様だ、と、楽しそうに犬と一緒に子守りをしていた。
 ちゃんと深雪のやったことを理解してくれたから、相手は、深雪を気に入ってくれた。ただ力でねじ伏せたわけではなかったのだ。それを、まったく語らずに、力でねじ伏せたように言ったのは、西王母なりの教育の一環なのだろう。
 力だけでねじ伏せることは、まだ、小さな霆雷にはできない。相手を理解して、相手にも理解される必要があることを学ばせたいに違いない。
「陸続、しばらく、おまえは滞在していなさい。小竜が暴れたら、おまえでないと止められないだろう。」
 玄武の長は、深雪の性質を、そっくり譲り受けている陸続も、お気に入りだ。陸続が、真剣に止めれば、やめてくれる。
「玄武の長様は、私では・・・・」
「そうでもないぞ。あの方は、おまえにだけ意地悪をする。」
「確かに、そうですが・・・」
「霆雷が泣いたら、止めに入ればいい。どうせ、あの方は、泣かせるだろう。」
「泣かされないっっ。」
 俺は強いんだぞっっ、と、息巻いている小竜に、青竜王は苦笑する。まあ、試しにやってみればいい、と、煽っておく。まだまだ、敵う相手なんていないのだと理解させればいいだろう。
 別に、深雪と同じようにする必要はない。霆雷には、霆雷の性質に見合った形の出会いをすればいのだ。それで、相手が、どうしようと構わない。深雪の子供だという事実があるから、本気で怒ったりすることはないからだ。どんなに霆雷が本気になろうと、敵う相手はいないだろう。本気になる前に、深雪の息子たちが止めるだろうし、深雪本人も庇うに違いない。そうなると、誰も何も言えない。
 小竜を、陸続に返すと、青竜王は、出て行った扉へ視線を投げる。
「水晶宮の主人に、深雪が就いてから、争いはなくなった。細かいものは残っているが、それも、深雪の前でやるバカはいないだろう。」
「くくくくく・・・・そりゃあ、広、深雪が本気で怒るなんて、誰も望まないからな。せいぜい、今のうちは、深雪の傘に守られていれば良いさ。」
 傍にいた廉も、それに同意する。戦いを好まない心優しい気性の銀白竜に、戦いを挑むものはいない。銀白竜の背後を固めているものと、その当人の強さがあるから、今度の後見も表立って謗られることもないだろう。
「ようやく、東王父様の愚痴から解放される。やれやれですよ、兄上。」
「仲卿兄上、それを言いたいのは、孤雲だと思いますよ? 相当、ねちねちとやられていましたからね。・・・・華梨、こちらが落ち着いたら、一度、崑崙へ出向いてはどうだろう? あちらのお歴々たちも、深雪の顔は見たいはずだ。」
 六百年近く、孫が冷たいと漏らし続けた愚痴から、東王父も解放された。これからは、その被害は激減するだろうと、黒竜王が微笑む。
「ええ、落ち着いたら、謡池と崑崙には、挨拶に参ります。とりあえず、まずは、玄武ですわ。」
 ずっと、大人しい弱々しい次期様を演じ続けていたことから、自分の背の君は完全に解放される。それは、とても喜ばしいことだ。『顔見せ』の騒ぎが落ち着いたら、どちらにも挨拶に出向かなくてはならない。
「父上の猫被りは、相当なものでしたものね? 母上。・・・・くくくくく・・・私くしたちが次代に就きましたら、さらに竜族は強くなりましょう。」
 他の体表的な種族というのは、焔、土、風の属性を司る。だが、竜族は、水を司りはするが、その他の属性のものも存在する。だから、神仙界最強と呼ばれる。その力の他に、特別な力も携えた、深雪の子供たちが次期から当代となった時、誰も竜族に逆らえなくなることは必定だ。
 それまで、竜族の力は衰えたと噂されたことは、完全に払拭される。それに、霆雷の力が加わる。力だけで解決することはないが、それだけのものがあれば、戦いは起こらない。
「さらに、その次代が楽しみだぞ、俺は。この雷小僧の血を引いた竜王が登極すれば、さらに強くなるんだからな。」
 白竜王が、楽しそうに、そう告げたことに、みな、一同も頷く。二代続けて竜族に混じる血は、人間界からの特殊な能力を携えている。それを鑑みても、竜族の安泰は揺らがない。
「まあ、随分と先の話だ。この雷小僧が成人してくれなければ、話にならん。」
「二百年ぐらい、あっという間だぞ? 三叔父さん。」
「それまでに、神仙界の探検もしなくてはなりませんよ? 背の君。」
「そうだった。そっちのほうが楽しみだ。」
 成人しても、両親がまだ若いから、すぐに代替わりする必要はない。だから、どこでも人型になれる神通力を手に入れたら、神仙界を隅々まで探検するつもりをしている。
「親父さ、面倒だから、すぐに代替わりとか言ったら、止めてくれよな? 一叔父さん、廉。俺、いろいろと予定してるから、すぐはダメなんだ。」
「もちろんだ。好きなように旅をしてくればよい。」
 そこで、自分の幕僚たちも捜せるだろう。深雪のように、用意するつもりは、ここにいるものにはない。この雷小僧には、用意する必要はない。おそらく、自らで獲得してくるだろうからだ。
作品名:海竜王 霆雷 銀と闇4 作家名:篠義