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海竜王 霆雷 銀と闇3

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 軽くその腕に収まって、小竜は、尋ねる。家族というものを、今から作るのだと、両親に言われている。家族の中に含まれるのが、こういう年寄りもいるのが不思議だ。
「そういうことになるな。・・・おまえの後見をすることになるが、まあ、ひいじいであることは間違いない。」
「ひいじいは必殺技とかないのか? 虎のひいじいみたいなさ。」
「ほほほほ・・・申し訳ないが、私は戦うことはできないんだ。それならば、私の妻と遣り合ってみるといい。」
 東王父は神仙界一の学者である。戦うことはない。日々、様々な事象を探求するのが仕事というか趣味というか、生きる目的になっている。
「・・・じいちゃん・・・うちの小竜が死んだら、どうしてくれんた? ばあちゃんは最強だぞ? 」
 とんでもないことを言っているので、深雪が注意するが、ほほほほと笑っている。
「深雪、いくら、私くしでも、手加減はするのですよ? ・・・私に向かって、正直な感想を吐いたからと言って、その程度で怒ったりはしません。それより、逃げようとするのをやめなさい。せっかく、久しぶりに、おまえを抱き締めているのだから、大人しくなさいな。」
「いや、だって・・・もういいだろ? それより、後見でいいのか? ばあちゃん。これだぞ? 」
 ぎゅうぎゅうと胸に押し付けられるので、逃げようともがいているのだが、どっこい、祖母も、その程度の抵抗では逃してくれない。
「おまえの子供を後見することに関しては、最初から夫と共に考えていたことです。撤回などしません。・・・・おまえ、私くしたちを、あまり蔑ろにすると拉致して隠しますよ? 深雪。」
 白虎の長老との別れから、気を逸らせるために、祖母は、そう言って、さらに、ぎゅうぎゅうと抱き締める。
「あなた様、それなら、今度は崑崙に隠しますよ。・・・・深雪、たまには、じいのところへ遊びに来てくれててもよいと思うのだがね? 」
 一度、意識のない時に、謡池の桃園に隠されたことがある。身体が回復するまで、仕事そっちのけで、謡池のものや、この祖父が構い倒してくれたことがある。回復しないと跳べないから、あの時は、本当に参った、と、深雪も苦笑する。気分を沈ませないために、祖父は、軽口を吐き出している。その気遣いが嬉しいが、本気でやりそうな夫婦なので、釘だけは刺す。
「今度、行くよ、じいちゃん。」
「おまえの口約束ほど、当てにならないものはない。・・・・くくくくく・・・『顔見せ』も終わったことだし、このまま拉致しようかな。」
「やったら跳ぶからなっっ。」
 もちろん、元気なら、拉致なんて不可能なのは、東王父も理解している。だが、ここには、神仙界でも最強の一人がいる。
「あなた様、深雪と遊んでくださいませんか? 何、あなた様には、この小竜の相手をお願いする。」
「まあ、お戯れを・・・それなら、そのまま謡池へ連れ出しますよ、あなた様。あなた様こそ、その小竜と遊ばれればよろしいでしょう。」
「・・・じいちゃん、ばあちゃん・・・・洒落にならないって。」
「てか、親父、本気のアイドルじゃんっっ。」
 霆雷そっちのけで、深雪の取り合いをしている二人に、霆雷も爆笑する。たぶん、この二人、自分のことはついでで、父親を構いたいだけなのだろう。
「うるせぇーよ。・・・ほら、じいちゃんも、ばあちゃんも・・・そろそろお仕舞いにしてくれ。」
 押さえつけられていた腕から、消えて、その側に移動する。今日は、後見の顔見せなのだ。こんなところで、遊んでいる場合ではない。祖父の腕から、小竜を取り上げると、きちんと視線を合わせた。気分は落ち着いた。だから、小竜に、今日のことを注意する。
「霆雷。」
「おう。」
「白虎のじい様のことは、誰にも言うな。」
「う? なんで? 」
「時を渡れる力というのは、あまり知れ渡るのはまずい。・・・それに、華梨に逢わせてやれなかったから、知られたくないんだ。」
「タイムトリップってやつ? 」
「ああ、そういうもの。この世界でも特殊な力だ。・・・白虎のじい様のことは覚えておいてくれ。たが、誰にも告げてはいけない。いいな? 」
「タイムパラドックスを引き起こすからか? 」
「・・・それだけの影響力はない。ただ、ばあちゃんに迷惑がかかるからだ。」
 あまり広く知られては、それを頼むものが、必ず、大量に現れる。おそらく、時間を遡るということは、逆も可能だろうし、流れを変えてしまう怖れもある。
「言わない。」
「うん、それで頼む。」
 そして、視線を外さず、小竜に暗示をかけた。口にしようとしても、口に出来ないという暗示だ。まだ、幼い小竜には秘匿自体が難しい。だから、念を入れる。当人は気付いていないが、祖父と祖母は気付いて、微笑んでいる。この用心深さが、深雪だ。
「さて、東おじいさま、西おばあさま、奥へ案内いたします。」
 言葉遣いも、がらりと変って、優雅に、水晶宮の主人は、口上を述べて、私宮へと歩を進める。
作品名:海竜王 霆雷 銀と闇3 作家名:篠義