VALKYRIE
4.JUDGEMENT
頬を伝う涙が、草原を走る風に運ばれていく。
青々しい絨毯に跪き、頭(こうべ)を垂れるフィオリア。
「―――エリーゼは、自分の意志で戦場に―――お前についてきたんだ」
「……ゼウスか」
「結果的にお前を庇って彼女は死んだが、気に病むな」
「―――黙れ!! 私が、側についていながら……護ってやれなかった……! 私のせいで……」
「エリーゼは、護ってくれだなんて言わなかっただろう?」
一陣の風が、二人の空気を揺らした。
「戦では何百もの兵が死ぬ。それをずっと見てきたお前が今更どうした。今まで死んできた兵にも、そんな悲しみを見せたことがあったか?」
遊ばれた髪が、舞うようにおりる。
「―――まぁ……今日ぐらいは〝戦乙女〟のことは忘れていいぜ」
そう言葉を残して草原を去ったゼウスの表情を、背を向けたままのフィオリアは知ることはなかった。