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海竜王 霆雷 銀と闇1

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 二人が大切だから、深雪は心配しているらしい。本当に、あなたは・・・と、胡は苦笑する。敵なんているわけがない。深雪が水晶宮の主人である限り、力の均衡は取れていることを失念しているのだ。以前とは、条件が異なってきた。それは、ひとえに、この水晶宮の主人が頭角を現してきてからのことだ。それまでは、竜族の力が衰えたと噂されていたが、深雪が主人になる頃に、その噂は払拭された。そして、シユウの彰を友人として、水晶宮に住まわせたことで、その評価は、さらに変わった。それらの経緯からして、今の深雪に対して、非難を浴びせられるものはいない。
「深雪、誰も敵対なんてしないから安心しなさい。あなたがいる限り、竜族に反旗を翻す相手は存在しない。・・・唯一、対抗しうるシユウですら、あなたの親友が長だ。それに、朱雀も白虎も玄武も、あなたのことを可愛がっている相手が、必ず存在している。それらは、みな、一族の長の地位にあるものばかりだし、天帝の孫まで味方につけている。この陣容を鑑みて、それでも、あなたに害を及ぼすのは不可能だ。」
 実際、それだけではない。この水晶宮の銀白竜自身の強さが、それを言わせぬはずだ。ただの杞憂だと胡は、ぽんぽんと義弟の背中を叩く。
「胡兄は、好意的に考えてるからだ。」
「そりゃそうだろう。私の可愛い義弟に害なすなら、私も本気を出すつもりだからね。誰だろうと、私も退かない。」
「兄バカすぎだよ、胡兄。一族のほうが大事だろ? 」
「もちろん、一族が一番だが、おそらく誰も反対はしないさ。廉姉上が親代わりをした小竜のことは、みな、一族に連なるものとして認識している。だから、そういうことは考えなくてもいい。もし、あのお二人が、そう自薦されたら、喜んで受ければいいですよ。」
「・・・ありがとう、胡兄・・・」
 小声で話していたので、そのままだったが、深雪も身体を離した。いつも、他には聞かせられない話は、こんな形でやっている。じゃあ、お菓子を食べようね? と、胡は茶器を用意する。まだ子ども扱いなのも、仕方がない。
「けどね、深雪。あなたの時は、後見人が三人だった。だから、今度も三人でもいいとは思うので。先着順で、朱雀も入れてくれると重畳だ。」
「胡兄? うちのちびは、とんでもないよ? 」
「・・・そんなもの・・・あなたの時に体験しているさ。・・・ほら、熱いから気をつけて。」
 用意した茶器を渡して、朱雀の長は笑っている。いや、心底びっくりするよ、と、深雪は内心で、そのちびを呼び出した。一度、実物を拝むほうがいいだろうと思ったからだ。
 すぐに、そのちびは現れて、自分の膝に飛び込んだ。
「うお、赤い鳥っっ。親父、叩きのめすのか? 」 と、いけしゃあしゃあと胡を睨みつつ、そう吐いた小竜に、胡は、自分の茶器を取り落としたのは言うまでもない。
 
作品名:海竜王 霆雷 銀と闇1 作家名:篠義