小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

顔のない花嫁

INDEX|4ページ/27ページ|

次のページ前のページ
 

The 15th loop



 
 
「わぁっ……!」
小鳥たちが囀りで朝の来訪を伝える中、アレンはあわててベッドから飛び起きた。彼の体は汗でグッショリ、もしかして悪い夢でも見たのだろうか。
荒い呼吸を繰り返し、自分を落ちつけてからアレンはベッドから降りる。
「まったくあの夢は何なんだ……」
鏡の前で頭を押さえながら彼は呻く。
昨夜、彼が見たのはひどく不可思議な夢。気が付くと彼は真っ白な教会にいて、見知らぬ誰かと結婚式を挙げていた。いや、自分は確かに"彼女"を知っているはずなんだ。
自分は彼女を愛したからこそ、あの式場にいた。……にもかかわらず、自分は彼女のことを思い出せない。
……そう、彼女の顔すらも。
「あの女の人は一体誰なんだ……」
アレンは何度も自分に問いかける。
しかし、何度問いかけても一向に答えは出ない。
開け放った窓から、朝の肌寒い風が入って来てアレンの顔を撫でた。
「あぁ……あんな変な夢のことは忘れよう」
自分に言い聞かせるように言いながら、アレンは頭を振る。そう……どうせアレは夢。
大した意味などあるはずがない。
……でも本当に?
何度、頭を振っても、妙なモヤモヤが消えることはなかった。
スッキリとしない表情のまま、彼はリビングに降りる。
そこではすでに妹のマリアが朝食の支度をして待っていた。
「おはよう」
マリアが朝のコーヒーを口に運びながらアレンの方に顔を向けた。
「あぁ……おはよう」
疲れた様な表情で、アレンは手を振り返す。そんな兄の様子を怪訝に思ったのか、マリアは顔をしかめた。
「どうしたのお兄ちゃん。体調でも悪いの?」
「いいや……そういうわけじゃない」
「じゃあ、どうしたの?」
アレンは応えるべきか一瞬迷った。
はたしてマリアにあの不可思議な夢の話をするべきなのか。しかし結局アレンはこう答える。
「うん……ちょっと変な夢を見てさ」
「変な夢……?」
「ああ。気が付くとぼくは真っ白な式場で女の人と結婚式を挙げているんだ」
「へぇ……それは誰と……?」
「それが……俺にも分からないんだ」
「分からない?」
マリアの口元に冷ややかな笑みが浮かぶ。
彼女は明らかにアレンの話を疑っている。
「うん……自分でもおかしな話だと思うんだけどな……」
それからアレンは夢の状況を淡々と説明した。
雷鳴で自分のスピーチが中断され、気が滅入ってしまったこと。しかしそれを、妻が慰めてくれたこと。
……そして、その妻には顔がなかったこと……。
「ちょっと……顔がないってどういうことよ」
さすがにマリアも驚いた様子で飲んでいたコーヒーをテーブルに置きアレンの方に身を乗り出した。
「どうもこうもそのまんまの意味だよ」
―顔の部分だけがポッカリ、なくなっちゃってるんだ―。
あの光景を思い出し、アレンは身震いする。温かい声で自分に駆け寄る妻。しかしその妻には顔がない―。
「……なんだか不気味な夢ね」
気味悪そうに言いながらマリアが再びコーヒーを口に運ぶ。
「だろ。おまけにぼくはその女の人を知っている気がするんだ。でも俺はその女の人のことを思い出せないからなおさら質が悪い」
「……所詮夢のことなんだから深く考えない方が良いよ」
マリアが苦笑しながら言った。
「あぁ……まぁそうなんだけどな……」
しかしアレンは納得できなかった。何かが引っ掛かる……あの夢は一体―?
   
  





作品名:顔のない花嫁 作家名:逢坂愛発