短文(死)
狭い所は嫌いだ。
暗く、冷たく、無遠慮に私に逼迫して、私を、私の内を侵す。
狭い所は嫌いだ。
暗澹と、淡々と、無責任に私を責め立てて、私を、私という存在を圧迫する圧縮する圧搾する。
だから私は、永らく死の床に就き、今ようやく解放されんとしている私は、枕元に佇むその人に乞うたのだ。
どうか、どうぞ、私がこの世に在る権利を手放してしまった暁には、お願い致します。
私の死骸を墓穴に閉じこめる事は、しないで戴きたい。
どうか、どうぞ、鳥に喰らわせてやって戴きたい。
髪と云わず、肉と云わず爪と云わず、生前私を成していた全て、骨に至るまでその全てを、鳥に喰らわせてやって戴きたい。
烏でも雀でも、鷹でも鳶でも構いはしません。
羽を持ち、空を飛べる生き物に喰らわれたいのです。
もしそれが出来ぬと仰るなら、どうか、せめて、私の死骸を焼いた灰は川に流し、残った骨は海へ棄てて下さい。
私、狭い所は嫌いなのです。
暗い所は怖いのです。
私は、私を侵されたくはないのです。
なればこそ、私は鳥に喰われたい。
私と云う残骸を喰らった鳥の目となり肉となり、私は、私であった残骸の中の私と云う残滓は、初めて安らかな死を迎える事を許されるのです。
(閉所恐怖症患者の理想死に関する記述)
暗く、冷たく、無遠慮に私に逼迫して、私を、私の内を侵す。
狭い所は嫌いだ。
暗澹と、淡々と、無責任に私を責め立てて、私を、私という存在を圧迫する圧縮する圧搾する。
だから私は、永らく死の床に就き、今ようやく解放されんとしている私は、枕元に佇むその人に乞うたのだ。
どうか、どうぞ、私がこの世に在る権利を手放してしまった暁には、お願い致します。
私の死骸を墓穴に閉じこめる事は、しないで戴きたい。
どうか、どうぞ、鳥に喰らわせてやって戴きたい。
髪と云わず、肉と云わず爪と云わず、生前私を成していた全て、骨に至るまでその全てを、鳥に喰らわせてやって戴きたい。
烏でも雀でも、鷹でも鳶でも構いはしません。
羽を持ち、空を飛べる生き物に喰らわれたいのです。
もしそれが出来ぬと仰るなら、どうか、せめて、私の死骸を焼いた灰は川に流し、残った骨は海へ棄てて下さい。
私、狭い所は嫌いなのです。
暗い所は怖いのです。
私は、私を侵されたくはないのです。
なればこそ、私は鳥に喰われたい。
私と云う残骸を喰らった鳥の目となり肉となり、私は、私であった残骸の中の私と云う残滓は、初めて安らかな死を迎える事を許されるのです。
(閉所恐怖症患者の理想死に関する記述)