「新シルバーからの恋」 第六章 お見合い
第六章 お見合い
温かい日差しに恵まれる4月10日土曜日がやって来た。懐かしい顔にたくさん会えることを楽しみに悦子は家を出た。会場の梅田のホテルのパーティールームにはちょっと早めに司会の恵子と世話役の剛司、それに主催の徹が来て準備をしていた。全てセットし終えて昼ごはんを三人で食べながら今日の出席者リストをチェックしていた。
「悦子が来れるようになって良かったな」そう剛司は切り出した。恵子はチラッと徹の顔を窺い、「そうね、始めはご主人反対されていたからね。徹くんも良かったよね?」
「ああ、そうだな。剛司のお陰だよ、今日があるのは」
恵子は少し怪訝な顔をして、
「どうして中山くんのお陰なの?何か私の知らないことがあったの?」
徹は話そうかどうしようか迷って、剛司の顔色を見たがニコニコしていたので思い切って話した。
「恵子だけに言うけど他の皆には内緒にしてくれよ」
「ウン、解かった」
「実は・・・悦子と美雪両方と付き合っていてそれがバレて揉めたんだよ。剛司に助け舟を出してもらって何とか話し合って許してもらえたけど、そうじゃなかったら悦子とは絶交になっていたからここへはどちらかが来れなくなっていたんだ」
「へえ〜悦子と仲良くしていたのは知っていたけど、美雪さんともそうなっていたのね。中山くんも複雑な心境よね?」
「俺は関係ないよ。美雪がどうなろうとも。他人だし・・・今は伸子の事しか思ってないしね。でも、悪いのは美雪だよ。色気使って徹を誘惑したんだから、男なんてモラルとか妻がいるからとか関係ないから・・・所詮やりたいだけなんだし、あちらが元気ならね」
「あなたも酷い事を言うのね。女の敵じゃないのそれじゃあ」
剛司は徹の弁護をしたつもりだったが逆効果だったようだ。
「剛司!言いすぎだよ。美雪さんが可哀相に思うぞ」
「お前何庇っているんだ?酷いことを言われたくせに・・・」
「それは・・・ボクが悪いことをしたから・・・仕方なかったんだ」
「悦子と二股掛けていた事がか?」
「違うんだ・・・」
徹にはようやく解かったことがあった。
「始めは美雪が悦子に嫉妬して酷いことを言ったと思っていたんだけど、良く考えたらそれもあるけど、それより悦子に酷いことを言ったことを気にしていたんだ」
「悦子と美雪さんが仕事で仲良くなって打ち明けたから解かったのね。美雪さんは徹くんの自分への気持ちが悦子と同じだって感じたのね」
「そう。悦子に優しくない、妻に優しくないボクが美雪に優しいなんてあり得ないって・・・そう感じたんだと思うよ」
「所詮は遊び気分だっていう事が解かったから、あなたへの思いも冷めてしまったのよね・・・解かるわ」恵子は少し徹が成長したと感じた。久しぶりに会ったエリーゼでの時に比べて今の方が落ち着きがあるように感じられるからだ。
「恵子もそういえば、結婚間近だろう?決めているのか日取りとか?」剛司が思い出したように聞いた。
「ええ、ありがとう。今日皆に発表しようかと思っているの。急だけど6月にしようかと、ジューンブライドだし」
「そうなの!おめでとう。相手美雪の同級生だったよね?」
「そうよ、中山くん。だから美雪さんも式には呼ぶわよ」
「おう、それは複雑だな。伸子も同席だろう?他に徹も来るだろう・・・悦子も・・・こりゃ、大変だ!ハハハ・・・」
「笑い事じゃないだろう!剛司。目出度い席で離婚と不倫じゃ・・・」徹は自嘲気味に言った。
「男はそんなふうに思っているから女性に信用されないのね。同じ男でも誠二とはエライ違い!本当に・・・」
「おい、恵子!それはおノロケかそれともイヤミか?」
「両方よ!中山くんも伸子に嫌われないようにしないと、振られたらもう誰も相手になんかしてくれないよ」
「お前に心配されなくても解かってるよ。俺は伸子のこと愛しているから・・・」
「あなたがノロケているんじゃない!もう、みっともない」
大きな笑い声がレストラン中に響いていた。徹は美雪に謝りの電話をして本当に良かったと思っていた。今日の同窓会が最高の盛り上がりを見せた事は言うまでもない。
懐かしい顔が揃いだした。もう直ぐ始まりの時間になろうとしていた。やがて午後二時になった。
「お静かに!では只今より淀川中学三年九組還暦同窓会を始めさせて頂きます。では各自近況報告を簡単にお願いします。最初は・・・山下君からにしましょうか?」
「今日はみんなに来てもらえて嬉しいです。残念ながら先月で仕事は退職となり新しい職探しに今は翻弄している所です。60歳を一つの区切りとしてもういちど人生を見直して、健康と感謝を忘れずに歩いてゆきたいと思っています」
拍手が沸く
「では、次は隣に座っている旧姓高井伸子さん、その次は隣の中山くんと順番にお願いします」恵子が話す順を指示した。
「高井伸子です。今日はここに来れて本当に嬉しいです。皆さん元気なので安心しました。私は訳あって離婚をしました。そして縁があって隣にいる中山くんと一緒に暮らしています。入籍は済ませています。晩年になって中学の時に好きだった中山くんと一緒に暮らせて幸せを感じています。皆さん遊びに来てください。いつでも同窓会ですから」
「中山です。今伸子が話したように結婚しました。俺にとって最高のパートナーと再婚出来た事を嬉しく思っています。人生何があるかわからないけど結婚も離婚もそして再婚も経験させてもらいました。後は・・・葬式だけですね未経験は」
最後の方になって悦子の順番が来た。
「旧姓川野悦子、今は平川悦子です。今日の幹事さん、ご苦労様でした。皆さんに会えて本当に嬉しく思っています。先月からご縁がありまして三友銀行新京橋支店に勤務しています。結婚してから初めて仕事に出ました。夫も同じ銀行にいます。最近仕事の厳しさが解かり始めて夫への理解も深まりました。頼りきっていた自分から夫を助けられる自分に変身中です。エステにも通っているんですよ!ウソみたいでしょ?」
少し会場がざわついた。最後になった恵子が挨拶を始めた。
「まだ独身の酒井恵子です。誰ですか?笑ったのは・・・まあいいですけど。皆さんに告白します!6月に挙式を挙げる予定でいます。ここに来てくれたみんなには招待状を出しますから、都合よかったら出席してくださいね。相手は二つ年下の同じ中学の後輩です。縁なんてどこにあるのかわからないって実感しています。新婚旅行はハワイに行こうかと思っていますので、暇している人がいたらご一緒しませんか?出来たらご夫婦でご一緒希望です」
この問いかけに剛司が手を挙げた。自分たちも新婚旅行に行っていないから同行したいと話した。あと何人かは希望したが、帰って夫もしくは妻に聞いてから返事するという事になった。悦子は自分も行きたかったが仕事が休めないので断念せざるを得なかった。
近況報告が済んで、各自飲み物を手にしながら歓談に入った。
恵子は徹から指示されていた恩師の欠席を報告した。
「それから本日担任の沖先生ご出席という事でしたが、体調を崩されていまして欠席となりました。残念ですが回復をお祈りさせていただきましょう」
「ねえ、恵子。お相手の人どんな方?」伸子は聞いてきた。
温かい日差しに恵まれる4月10日土曜日がやって来た。懐かしい顔にたくさん会えることを楽しみに悦子は家を出た。会場の梅田のホテルのパーティールームにはちょっと早めに司会の恵子と世話役の剛司、それに主催の徹が来て準備をしていた。全てセットし終えて昼ごはんを三人で食べながら今日の出席者リストをチェックしていた。
「悦子が来れるようになって良かったな」そう剛司は切り出した。恵子はチラッと徹の顔を窺い、「そうね、始めはご主人反対されていたからね。徹くんも良かったよね?」
「ああ、そうだな。剛司のお陰だよ、今日があるのは」
恵子は少し怪訝な顔をして、
「どうして中山くんのお陰なの?何か私の知らないことがあったの?」
徹は話そうかどうしようか迷って、剛司の顔色を見たがニコニコしていたので思い切って話した。
「恵子だけに言うけど他の皆には内緒にしてくれよ」
「ウン、解かった」
「実は・・・悦子と美雪両方と付き合っていてそれがバレて揉めたんだよ。剛司に助け舟を出してもらって何とか話し合って許してもらえたけど、そうじゃなかったら悦子とは絶交になっていたからここへはどちらかが来れなくなっていたんだ」
「へえ〜悦子と仲良くしていたのは知っていたけど、美雪さんともそうなっていたのね。中山くんも複雑な心境よね?」
「俺は関係ないよ。美雪がどうなろうとも。他人だし・・・今は伸子の事しか思ってないしね。でも、悪いのは美雪だよ。色気使って徹を誘惑したんだから、男なんてモラルとか妻がいるからとか関係ないから・・・所詮やりたいだけなんだし、あちらが元気ならね」
「あなたも酷い事を言うのね。女の敵じゃないのそれじゃあ」
剛司は徹の弁護をしたつもりだったが逆効果だったようだ。
「剛司!言いすぎだよ。美雪さんが可哀相に思うぞ」
「お前何庇っているんだ?酷いことを言われたくせに・・・」
「それは・・・ボクが悪いことをしたから・・・仕方なかったんだ」
「悦子と二股掛けていた事がか?」
「違うんだ・・・」
徹にはようやく解かったことがあった。
「始めは美雪が悦子に嫉妬して酷いことを言ったと思っていたんだけど、良く考えたらそれもあるけど、それより悦子に酷いことを言ったことを気にしていたんだ」
「悦子と美雪さんが仕事で仲良くなって打ち明けたから解かったのね。美雪さんは徹くんの自分への気持ちが悦子と同じだって感じたのね」
「そう。悦子に優しくない、妻に優しくないボクが美雪に優しいなんてあり得ないって・・・そう感じたんだと思うよ」
「所詮は遊び気分だっていう事が解かったから、あなたへの思いも冷めてしまったのよね・・・解かるわ」恵子は少し徹が成長したと感じた。久しぶりに会ったエリーゼでの時に比べて今の方が落ち着きがあるように感じられるからだ。
「恵子もそういえば、結婚間近だろう?決めているのか日取りとか?」剛司が思い出したように聞いた。
「ええ、ありがとう。今日皆に発表しようかと思っているの。急だけど6月にしようかと、ジューンブライドだし」
「そうなの!おめでとう。相手美雪の同級生だったよね?」
「そうよ、中山くん。だから美雪さんも式には呼ぶわよ」
「おう、それは複雑だな。伸子も同席だろう?他に徹も来るだろう・・・悦子も・・・こりゃ、大変だ!ハハハ・・・」
「笑い事じゃないだろう!剛司。目出度い席で離婚と不倫じゃ・・・」徹は自嘲気味に言った。
「男はそんなふうに思っているから女性に信用されないのね。同じ男でも誠二とはエライ違い!本当に・・・」
「おい、恵子!それはおノロケかそれともイヤミか?」
「両方よ!中山くんも伸子に嫌われないようにしないと、振られたらもう誰も相手になんかしてくれないよ」
「お前に心配されなくても解かってるよ。俺は伸子のこと愛しているから・・・」
「あなたがノロケているんじゃない!もう、みっともない」
大きな笑い声がレストラン中に響いていた。徹は美雪に謝りの電話をして本当に良かったと思っていた。今日の同窓会が最高の盛り上がりを見せた事は言うまでもない。
懐かしい顔が揃いだした。もう直ぐ始まりの時間になろうとしていた。やがて午後二時になった。
「お静かに!では只今より淀川中学三年九組還暦同窓会を始めさせて頂きます。では各自近況報告を簡単にお願いします。最初は・・・山下君からにしましょうか?」
「今日はみんなに来てもらえて嬉しいです。残念ながら先月で仕事は退職となり新しい職探しに今は翻弄している所です。60歳を一つの区切りとしてもういちど人生を見直して、健康と感謝を忘れずに歩いてゆきたいと思っています」
拍手が沸く
「では、次は隣に座っている旧姓高井伸子さん、その次は隣の中山くんと順番にお願いします」恵子が話す順を指示した。
「高井伸子です。今日はここに来れて本当に嬉しいです。皆さん元気なので安心しました。私は訳あって離婚をしました。そして縁があって隣にいる中山くんと一緒に暮らしています。入籍は済ませています。晩年になって中学の時に好きだった中山くんと一緒に暮らせて幸せを感じています。皆さん遊びに来てください。いつでも同窓会ですから」
「中山です。今伸子が話したように結婚しました。俺にとって最高のパートナーと再婚出来た事を嬉しく思っています。人生何があるかわからないけど結婚も離婚もそして再婚も経験させてもらいました。後は・・・葬式だけですね未経験は」
最後の方になって悦子の順番が来た。
「旧姓川野悦子、今は平川悦子です。今日の幹事さん、ご苦労様でした。皆さんに会えて本当に嬉しく思っています。先月からご縁がありまして三友銀行新京橋支店に勤務しています。結婚してから初めて仕事に出ました。夫も同じ銀行にいます。最近仕事の厳しさが解かり始めて夫への理解も深まりました。頼りきっていた自分から夫を助けられる自分に変身中です。エステにも通っているんですよ!ウソみたいでしょ?」
少し会場がざわついた。最後になった恵子が挨拶を始めた。
「まだ独身の酒井恵子です。誰ですか?笑ったのは・・・まあいいですけど。皆さんに告白します!6月に挙式を挙げる予定でいます。ここに来てくれたみんなには招待状を出しますから、都合よかったら出席してくださいね。相手は二つ年下の同じ中学の後輩です。縁なんてどこにあるのかわからないって実感しています。新婚旅行はハワイに行こうかと思っていますので、暇している人がいたらご一緒しませんか?出来たらご夫婦でご一緒希望です」
この問いかけに剛司が手を挙げた。自分たちも新婚旅行に行っていないから同行したいと話した。あと何人かは希望したが、帰って夫もしくは妻に聞いてから返事するという事になった。悦子は自分も行きたかったが仕事が休めないので断念せざるを得なかった。
近況報告が済んで、各自飲み物を手にしながら歓談に入った。
恵子は徹から指示されていた恩師の欠席を報告した。
「それから本日担任の沖先生ご出席という事でしたが、体調を崩されていまして欠席となりました。残念ですが回復をお祈りさせていただきましょう」
「ねえ、恵子。お相手の人どんな方?」伸子は聞いてきた。
作品名:「新シルバーからの恋」 第六章 お見合い 作家名:てっしゅう