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てっしゅう
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「新シルバーからの恋」 第五章 破綻

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剛司はまず悦子に電話した。事情を話して悦子から美雪に伝えてもらった。もし、謝りたいのなら悦子がいる時に電話を掛けて欲しいと返事があった。徹は剛司を通じて時間を決めて美雪の家に電話をする約束をした。

3月15日が来た。悦子の勤める三友銀行新京橋支店がオープンする朝を迎えていた。夫に頑張れ!と勇気付けられスーツ姿で初日は出勤した。

開店30分前に支店長の話があってしばらくの間保険窓口に大阪生命よりヘルプが来ることを知った。やがてそれは美雪であることが解かった。開店少し前になって美雪は出社してきた。

「姉さん・・・失礼しました平川さん、中山です。よろしくお願いします」周りに気遣って丁寧にそう挨拶をした。
「平川です。よろしくお願いします」悦子もそう簡単に挨拶をした。目線があってニコッと笑って打ち合わせに入った。午前9時のチャイムが鳴ってシャッターが開かれた。大勢のお客が待ちわびたようになだれ込んできた。粗品プレゼントに群がったのだ。

悦子は窓口で順番待ちをしているお客に声を掛けて保険の案内をして廻った。そうしろと言われたのではない。美雪と話し合って交替でロビーにいるお客に商品の案内をしょうと決めたのだ。優しい笑顔の悦子と色っぽい美雪とが何人もの客相手に行過ぎないようにパンフレットを見せ興味のある人だけを専用の窓口に案内した。

午後3時になって窓口が閉鎖され開店初日が無事終了した、どこからともなく拍手が沸いた。支店長はご苦労様の挨拶に続いて、悦子の名前を呼んだ。
「皆さんもご存知の通り当支店はフィナンシャルの窓口を設けました。新人の平川さんと大阪生命の中山さんとで合わせて3件の保険契約を戴けました。これはすごいことです。お二人にその努力の拍手をお願いします」

悦子が一人と美雪が二人契約にこぎつけた。普通新人だと月に一人とか二人とか言う数字らしい。さすがに信用の高い銀行窓口だと美雪は感じた。全てが終わって帰る時間が来た。悦子は美雪にお茶しようと誘った。
「じゃあ、一度本社に戻ってから出直すわ。6時に守口駅で」
美雪はそう言って足早に通用門に向かった。悦子は帰り際支店長から、「これからも期待していますよ。それから平川先輩によろしくお伝え下さい」と言葉を掛けられた。
「ありがとうございます。頑張りますのでご指導下さい。主人には申し伝えておきます。ではお先に失礼します」

まだ夕方に吹く風は冷たく感じられる。桜の花がやっと膨らみかけた川向こうを見ながら京阪京橋駅に向かって歩いていた。

「お姉さん、お待たせ。少し時間が過ぎちゃったわね」
「いいのよ。今日は頑張ったね私たち。美雪のお陰で3件も契約が取れて褒められたし。なんかやってゆけそうな気がしてるわ」
「うん、私もね手ごたえ感じているの。お客様が何を求めてらっしゃるのか、早く気付いてあげて商品を提案できれば結構いい線行くんじゃないかって・・・勉強して社会保険労務士の資格も取りたいわ」
「いいんじゃない。資格があれば将来独立も出来るし。美雪はまだまだ若いから夢が持てるね」
「夢なんかじゃなく、ねえ二人で事務所持ちましょうよ。5年ぐらい先をめどに。そう考えればきっとものすごく頑張れるって思うの」
「美雪・・・そんなふうに思っているのね。大したものね。つくづく徹くんなんかと別れて良かったわ。そうそう、その徹くんだけど、いつ電話させるの?剛司に返事しなくっちゃ」
「そうでしたね・・・お姉さんの都合は?」
「休みの日ならいつでも構わないよ」
「早いほうがいいですよね?今度の土曜日にしましょうか。午後一番ぐらいで。お昼ごはんご一緒しましょう」
「ねえ?今度は家に来ない?主人ね土日と友達と出かけるのよ。何でも大学時代の同級生とか言ってたわ。だから気を遣わなくていいのよ」
「そうですか・・・じゃあ、お邪魔しようかな・・・ご主人女性となんて心配はないですよね?」
「女性と?・・・考えたことないわ。フフフ・・・もし、そうだったらどんな人なのか見てみたいわね。興味あるから」
「へえ〜そんなふうに思えるんだ・・・成長しましたねお姉さんは」
「お互い様じゃないの?」
「勉強させてもらいましたからね、きつく・・・ハハハ」

徹に20日の土曜日に私の家に電話して、と悦子は剛司に返事した。剛司からはOKと返事が来た。伸子の事を聞くと、「幸せに暮らしているよ。伸子はもう精神的に悩まなくなったからこれからは楽しく暮らせるよ」そう答えが返ってきた。もう直ぐ還暦同窓会の日がやってくる。一度は諦めた悦子だったが、今は出席できることを素直に喜んでいた。